2話 シュブは俺一人で片付ける。
2話 シュブは俺一人で片付ける。
「タイムリープ、どうやった? うまいこと、いけた? いい感じに殺された?」
と、軽やかな言葉を投げかけてきた。
質問には答えず、センは、穏やかな目のまま、
「田中。少し、話をしよう」
そう言いながら、
テキトーに腰をかけるよう促し、
トイメンで向かい合うと、
「……田中、お前がいてくれて本当によかった。おかげで折れずにすんだ」
「なんやねん急に、きしょいのう」
「ここまで、俺を支えてくれた『全て』に対して、俺は、今、深い感謝の念を抱いているが、その中でも、特に、強く感謝したいのがお前だ。お前がいなかったら、絶対に乗り越えられなかっただろう」
「……」
そこで、センは、
それまでの泰然とした表情を崩し、
真っ黒な笑みを浮かべて、
「……てめぇを殺す日まで、絶対に折れるわけにはいかないと誓ったおかげで……『ありあまる憤怒』に引っ張られたおかげで、俺は、壊れずにすんだ。狂気と共に在ることができた。ここで、改めて誓う。俺は、何があっても、必ず、てめぇを殺す。絶対にだ。覚悟しておけ。シュブを殺したあとは、てめぇの番だ。首は洗わなくていい。殺すときは、首を落とすのではなく、跡形もなく、バラバラの、木っ端みじんにしてやるから。あの地球人のように」
だんだん、記憶を回収できてきた田中は、
呆れ交じりにタメ息をついてから、
「……この上なく尊き命の王に、そこまでの激情を抱かせることが出来た、というのが、今のワシの中での、最大の誇りやな」
と、『嫌味と本音』が、ちょうどフィフティフィフティになっている言葉を口にした。
★
「……おお……体が軽い……」
シュブとのガチ最終決戦に挑むということで、
センは、『山ほどの縛り』から解き放たれた。
『えげつない地獄たち』から解放されたセン。
己の細胞全部が羽毛のように軽やかに感じる。
「――さて、ほな、準備は万端のようやし……さっそく、シュブと闘いにいこうか。現状の戦力やったら、万に一つも負けることはないやろう。配下連中も、サポーターとして、だいぶ磨き抜かれとるし」
そんな田中の発言に対し、
センは、
「シュブは俺1人で片付ける。シュブを倒した経験値は一滴残らず俺1人のものだ。雑魚どもの出る幕はない」
「……」
「田中。お前もくるな。お前の仕事はたった一つ。『俺がシュブを仕留めるため』の『強固な空間』を用意すること。それだけだ。会場整備が終わったら、あとは、家でのんびりミルクでも飲んでいやがれ」
「――配下連中は全員、しっかりと強くなっとる。サポーターとしての立ち回りを徹底すれば、シュブに殺される確率は少ない。なんやったら、ワシが、あいつらの盾になったる。せやから――」
「誰も、お前の意見は聞いてねぇ。シュブは俺の獲物だ。邪魔するな。邪魔するなら殺すぞ」
「ここまで、5兆6000億年もの間、ずっとお前を支え続けたワシを殺すって? 随分と薄情やな」
「……『お前を殺したい』という憤怒が『俺を支えていた』のは事実だが、お前自身に支えられてきたわけじゃねぇ。お前はひたすら、俺に嫌がらせをしていただけだ。ちゃんと宣言しておくが、シュブを殺したあとは、お前の番だ。俺の目標は、あくまでも貴様だということを忘れるな」
「ふむ、そうか。……ほな、『シュブを倒したあと』やなくて、ワシのことは、『シュブと一緒に殺す』ってのはどうや?」
「……あん?」




