41話 暴露のアリア・ギアスを前借りしていくスタイル。
41話 暴露のアリア・ギアスを前借りしていくスタイル。
「なんでもかんでも完璧なチートなんて存在しない。チーターは、さらなるチーターに駆逐される。それが世の理」
「ようするに、チートを使って、ここに潜入してきた、と? なめてんな……」
「センエース、君を倒すことが私の目的だが、君のスペックは異常なので、まともにやっていたら、『神の傑作アダム・クリムゾン』の時とまったく同じ結果になるだろうと予想される。だから、かなり綿密に作戦をたててきた。バカみたいに散々考えて、いろいろと、ありとあらゆる手を打って、どうにかこうにか、ここまで潜入させてもらった。ここからは『前借りした暴露のアリア・ギアス』を清算させてもらうが、実は、私の中には『B‐クリエイション』という、なかなかえげつないチートが内蔵されていてね。ソレを経由して、コスモゾーンのシステムをハックさせてもらった。あまり無茶は出来ないが、出現ポイントを、ナイトメアソウルゲートに移すぐらいなら、どうにか不可能ではなかった」
「……暴露のアリア・ギアスの前借りとかって、出来るものなのか?」
「出来ない。普通は。ちょっとだけシステムをバグらせて、むりやり、出来るようにしたんだ。システムを完全にバグらせると、コスモゾーンの強制修正システムが作動してしまうから、『やりすぎの無茶』は通らないが。――『修正が入らないギリギリのところでバグらせる』のが、チートをかますときのコツだよ。覚えておくといい」
「……」
「さて、ここで、君に『見てもらいたいもの』と、『聞いてもらいたい情報』がある」
悪夢バグは、そう言いながら、目の前に、
『チラチラと揺れる小さな魂』を顕現させた。
悪夢バグは、その魂を手のひらの上で、もてあそびながら、
「サーシャ・ラインという女の子がいる。大帝国の南部、リーベルト地区の街角にあるパン屋の娘で、年齢は10歳。性格は引っ込み思案で優柔不断。飛びぬけて優しい子かといえば、そうでもないけれど、まあ、平均よりは優しい子と言えるだろう。ペットの猫を大事に飼っている。親との仲は良好。将来の夢はパン屋を継いで、たくさんの人に喜んでもらえるパンをつくること」
「急になんだ?」
「その子を殺して、奪い取ってきた魂。それがこれだ」
「……」
「アダムの時と同じように、『能力を抑えた個体』を『先兵』兼『斥侯』兼『スパイ』として、現世に送り込んだ。存在値を200以下に抑え込んだ私の配下。小さな虫一匹だけが限界だったけど、どうにか、事前に、現世へと送り込むことに成功した。そして、秘密裏に、いくつかの魂を回収した、というわけさ」
「……」
「回収した魂の数は、およそ300。クズの魂を回収しても、君に対する人質にはならないだろうと思ったから、できるだけ優良な人間をチョイスさせてもらった」
そこで、300の魂をその場に顕現させる。
凝ったイルミネーションみたいに、チラチラと、様々な色でまたたく。
「ちなみに、大半は子供だ。赤子も結構な割合で混じっている。生まれたばかりの赤子、将来を夢見ている無垢な子供、善良でまじめで勤勉な一般人。――しっかりと厳選したから、なかなかいい感じのラインナップになった」