87話 5周やるだけだと、いつから錯覚していた?
87話 5周やるだけだと、いつから錯覚していた?
「ここまで頑張ってきて、その上、『もう一周やらされること』ってのが、すでに、むちゃくちゃなイジメなんや。せやから、流石に5周とか無茶を言うんは、やめておけ。ホンマに死ぬ。お前に死なれたらこっちが困るんや」
「お前が困るとか知らん。むしろ、できたら、積極的に困らせてやりたい。お前が苦しんでいる。それだけで宙へ浮かぶ。お前が死にそうにしている。それだけで、笑顔になる」
田中サーキュレーションを歌うセンに、
田中は、
「確認するまでもないけど、一応、確認しとく。まさか、本気で言うとるわけやないよな? ただの、カウンターやろ? ワシの『もう一周』というカマしに対して、数字ボケのカウンターを入れただけやんな?」
それ以外の可能性はありえない、
とでも言いたげな顔の田中。
しかし、センの顔にボケの色は皆無。
無色透明な、純粋覚悟の顔。
この段階で、田中は、センがいかに冷静でイカれているかを痛感していた。
これ以上の精神異形種はどこにも存在しないと確信したレベル。
だが、センは、そこから、まだ斜め上にいく。
『5周の提案をするだけ』でも、全人類ドン引き級なのだが、センの異常性は、その程度でとどまらなかった。
センはさらに、バキバキの目を血走らせて、
「あと、ここからの5周では、絶望ドーピングを、3倍に増やせ。『サイコジョーカー』と『イタズラな領域外の牢獄』だけで舞うのはもう飽きた」
「……………………はぁぁ?」
「やるなら、とことんだ。ここまでの6000億年で理解できた。俺は、まだ舞える。だから舞う。以上だ」
「……」
「プラス5周を達成した時の俺は、3倍の地獄を5兆年積んだ俺だ。合計5兆6000億年を積んだセンエースは強いぞぉ、多分。まったく想像もできんけど、多分、誰が相手でも秒殺できるはずだ。知らんけど」
★
――センエースは、ただ、同じことをプラス5回やるのではなく、
『とことん、成長率を追及した追加5周』を求めた。
サイコジョーカーとイタズラな領域外の牢獄。
この二つだけでも過剰難易度なのだが、
センは、その3倍の負荷を求めた。
田中は、『本当にいけるのか?』と疑問をいだきつつも、センが、あまりにもしつこく、それも本気で言ってくるため、しかたなく、最後には願いを叶えてあげた。
2周目以降で、センが背負うことになる縛りは、次の6点。
『オーバードライブ・ゼノ・サイコジョーカー』
『イタズラな領域外の牢獄』
『終焉の呪縛』
『ゼットオメガレベル』
『真・第一アルファの循環フルモード』
『メリークルシミマス/田中カスタム』
※ 追加された要素について、少しだけ解説を加えておく。
『終焉の呪縛』(センエース神話における『オメガが背負っているもの』と『ヒロインズが背負っているのも』――それら、すべてが、終焉の呪縛。つまりは『セレナーデの呪い』。『ヒロインズを救いたいと願ったオメガの想い』と『そんなオメガにもう一度会うためなら何でもすると誓った覚悟』が、そのまま呪いになっている。ちなみに、ヌルは、この『終焉の呪縛』を、どうにかしたいと願っていた。この重たい呪いを、センエースは、一部だけ、自分の中におさめていたが、その大半を背負うというのが、今回の縛り)
『真・第一アルファの循環、フルモード』(ヨグの中にある、燃費の悪い世界をセンがエネルギー源として支える。ようするに、体力をごっそりともっていかれる。一周目の時は、ヨグがやっていたが、2週目以降は、その全てを、センが担う)
『ゼットオメガレベル』(MP無限システムの根幹。『世界の病み』と一体化する。ゼットオメガレベルが上がれば上がるほど狂気度が増す。ゼノで上げたオメガレベルは、ゼットオメガレベルの下地に過ぎない。ゼットオメガレベルと人間失格とのシナジーで、センエースの性格がさらに、とんでもなく歪んでいくことになる)
『メリークルシミマス/田中カスタム』(かつてのセンが多大な魔力を費やして完成させた究極超神器。西遊記の孫悟空がつけていたワッカのようなもの。――肉体的負荷が増加する代わりに経験値が増加する『養成ギプス系』のアイテム。それを元にして、田中が過剰カスタムを施した逸品。常人が装備すると、指一本動かせなくなる。サイコジョーカーの精神的負荷と、メリークルシミマスの肉体的負荷のダブルで、経験値取得率は爆上がりするが、心身はずっとボロボロの状態となる)




