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86話 ワンモアタイム。


 86話 ワンモアタイム。


「シュブを殺すにはまだ足りへん。本当に全てを守りたかったら、『ラスト10億回のスペシャル追い込みモード』のまま、もう一周……『500億回(1兆年)』がんばれ。センエース。……おい、死んだように黙っとるけど、大丈夫か? まさか、あまりの衝撃に失神したとか言わんやろうな。まあ、仮に失神したとしても、叩き起こして現実を突きつけるけど――」


 などと言っている田中に、

 センは、手のひらを向ける。


「なんや? タイムか?」


「この指の本数を言ってみろ、田中さんよぉ」


「……」


「どうした? 数の数え方がわからないのか? じゃあ、レクチャーしてやろう。これが1、これが2、コレが3、これが4」


 と、指一本から、だんだん立てる指の数をふやしていって、最後に、改めて、田中に手のひらを向けて、


「4の次だ。わかるか? 大丈夫。よぉく考えればわかるから。これは幾何に見せかけた関数の問題だから、少々ややこしい引っ掛けとなっているが、落ち着いて考えれば、絶対にわかるから」


「5がなんやねん。『500億をもう一回とかありえへん』と言う、遠回りなメッセージか? それとも、まさか、喝采賛美のテイク3を要求しとるんとちゃうやろな」


「ちっちっち」

 

 と、人差し指一本を、軽くふりながら、


「へただなぁ、タナカくん。へたっぴさ。推測の立て方が下手」


「ハンチョウネタ、もうええねん。はよ言えや、鬱陶しいのう」


 そこで、センは、あえて、

 強烈にバキバキの目をして、

 田中を睨み、

 一切、冗談の色がない声音で、




「あと5周やらせろ」




 と、ちょっと何言っているかわからないことを口にした。

 

「……ん?」


 流石の天才堕天黙示録タナカくんも、

 この時ばかりは、アホの顔をすることしかできなかった。


 理解できずに困惑していると、

 バキバキの目をしているセンは続けて、


「神の王として命じる。あと5周やらせろ」


「……何を言って――」


「ここで、徹底的に積んでおく」


「……」


「もう、うんざりなんだよ。いくら強くなっても、すぐに、俺より強いチーターが湧き出てきて、ギリギリの闘いを強制させられる……もう、飽き飽きなんだよ。だから、この先。どんな敵が出てきても楽勝できるように……俺の大事なもん、全部を完璧に守れるように……ここで……限界を超えて積ませてもらう」


「……」


「命令だ。あと5周――」


「さすがに死ぬで。あと一周の段階で、耐えられるかどうかわからんのや。5周もやったら確実に死ぬ」


 田中が本気で心配している。

 もともと、『あともう一周をやらせる』というのが田中のプランだった。


 さすがのセンエースでも、この提案を受けることはないだろうと田中は推測していた。

 だから、いくつか、策を練った上で、田中はセンに『もう一周』をきりだした。


『ナメんじゃねぇ、もう一周とか、無理にきまってんだろ。鬼畜にもほどがある』

 と、全力で断られてからが交渉の本番だと思っていた。

 だが、実際のセンエースは、田中の推測を大幅に超越していた。


 田中は、渋い顔で、


「ここまで頑張ってきて、その上、『もう一周やらされること』ってのが、すでに、むちゃくちゃなイジメなんや。せやから、流石に5周とか無茶を言うんは、やめておけ。ホンマに死ぬ。お前に死なれたらこっちが困るんや」


「お前が困るとか知らん。むしろ、できたら、積極的に困らせてやりたい。お前が苦しんでいる。それだけで宙へ浮かぶ。お前が死にそうにしている。それだけで、笑顔になる」


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