83話 俺が……俺たちがムス〇大佐だ!
83話 俺が……俺たちがムス〇大佐だ!
――『最後の10億回』が、本当に地獄だった。
存在値99%カットという縛りは、やはり、頭がおかしかった。
とにかく大変で、ずっと、死にかけていた。
それでも、そんな状況でも、センは折れることなく頑張り続け、
細かなところでの『新しいコツ』を掴み続けて、強くなり続けた。
強くなって、センが心の中で『あ、いけるな。この感じだと普通に乗り越えられるな』と思ったタイミングで、いつも、『悪魔(田中)』が、ジャンッと顔を出して、追加の負荷をぶちこんできやがる。
おかげで、ずっと、気を抜けない。
ずっと、張り詰めた極限状態で、センは闘い続けるハメになった。
繰り返して、繰り返して、繰り返して、
いけそうになったら、負荷を増やされて、
その上で、また、繰り返して、繰り返して、繰り返して、
……そんなことを、センは、最後の最後までやり通した。
――最後の最後まで。
★
「……」
意識を取り戻した時、センは、自室で、ゲ〇ムボーイ片手に、
ムーア最終の作成に取り組んでいた。
「……」
特に意味もなく、部屋の中を、グルっと見渡してから、
センは、
「はっ……ははっ」
と、つい、笑ってしまった。
絶望の嘲笑ではない。
――乗り越えた者特有の『達成感』を含む笑み。
「俺、すげぇな」
と、センは、自分で自分をほめたたえる。
心の底からの称賛。
「やりきったよ……この地獄を……すげぇな……ほかの誰に出来んだよ、こんなこと。絶対に、誰もできんだろ。出来るってやつ、俺の前に出てこいよ。今後のコトは、お前に全部任せるから。頼むから出てきてくれよ」
などと、『危ない人感』全開で、ブツブツつぶやいていると、
そこで、
呼んでもいないのに、ヨグナイフが、勝手に、センの目の前に顕現して、
「見事だ。センエース。私は、貴様を誇りに思う」
と、センの偉業を、いったん、ほめたたえてから、
「まあ、それはそれとして、ボーナスタイムだ。今回獲得した経験値を割り振っていけ」
「……さすがに、もうちょい、余韻と戯れようや、今回ばかりはよぉ」
タメ息交じりにそんなことをつぶやいた直後、
ハスターが、背後から近づいてきて、
「……センエース、契約の時間だ」
と、前置きもなく、そう言った。
そんな彼に、センは、ドヤ顔で、
「今回で500億回目だ」
と、自身も、前置きなしでそう言い切った。
その衝撃を前にして、ハスターも、さすがに、目を丸くして、
「……冗談……ではないようだな……少なくとも、100億や200億の積み重ねじゃない」
膨れ上がっている自身のパワーと向き合いながら、ボソっとそうつぶやく。
「500億回……やりきったのか。センエース」
「おお。すげぇだろ。褒めろ。称えろ。喝采しろ。賛美しろ。そして、跪け。命乞いをしろ。小僧から石を取り戻せ。私がム〇カ大佐だ。僕が一番、ムスカ〇佐をうまく使えるんだ。俺が……俺たちがムス〇大佐だ!」
「ちょっと何言っているか分からないが……しかし、すごいな。本当に500億回をやりきるとは」




