79話 押してダメなら殺してしまえホトトギス。
79話 押してダメなら殺してしまえホトトギス。
センエースの根気は、戦闘面に特化しており、こういう平場での粘りでは、それほど輝きを有していないのだが、しかし、だからといって投げ出すわけにもいかないので、センは必死に歯を食いしばって、この、『史上最高クラスにしんどい戦い』と、真正面から向き合った。
会議は踊る。互いに一方通行の平行線。
――そんな中、センは突破口を見つけた。
一筋の後光……
最後の望み……
可能性の獣……
希望の象徴……
――すがりつく。
突破口をこじ開けていくセン。
その結果、カタツムリの速度だが、
どうにか、前に進むことが出来た。
センが見つけた画期的な解決の糸口。
それは、
「お前たちが強くなって、俺を守ってくれ」
という掟破りの逆懇願。
センエースは、ずっと、『お前らは黙って守られていればいい』のスタンスだった。
その姿勢は、天下という『旅人のコート』を、北風の息吹で吹き飛ばそうとする愚行。
そのことにようやく気付いたセンは、太陽になることを決断した。
センエースの『交渉における信条』の一つ『押してダメなら殺してしまえホトトギス』の精神では何も解決しない。
センエースは、また一つ成長する。
「俺は死にたくない。だから、なんとしてでも強くなって、俺を守ってくれないか」
その嘆願を受けた配下たちは、まさに、水を得た魚。
初孫以上に愛おしい、大事な大事な主人を守るため、
『死力の限りを尽くし、あなた様を守る盾として、永久に寄り添うと誓います』
と、力強く宣言する天下の面々。
そんな彼らに、センは、
「いや、寄り添う必要はない。もっと、ラフに、もっと軽く考えてほしい。『暇なときには、守ってもいいかな』ぐらいのテンションでいてくれ。頼んだぞ」
『いえ、あなた様の盾として、剣として、24時間365日、この命尽きるまで、いえ、この命が尽きたとしても、あなた様の血肉となり、魂の一部となり、永久に寄り添うと誓います』
「いや、大丈夫。そういうアレは大丈夫。ていうか、ずっと俺の側にいたら、お前らの本分であるところの、『人類の守り手』としての役割がおろそかになってしまうだろう。それはダメじゃん。というわけで――」
『人類など、どうでもいい! 我々にとって大事なのはあなた様だけ! あなた様さえいれば、それでいい!』
「……いや、人類の方が大事でしょ? 功利主義的に、常識的に。弱い命の未来を守る警察・行政・監査委員として、君たちには、今後も、頑張ってもらいたいと、俺は、王として切に願うところなわけで、だから――」
『いえ、我々は、王を守る親衛隊! 人類がどうなろうと関係ありません! 王さえいれば、それで我々の陣営の勝ち。つまりは、人類の対利! 王よ! この上なく尊き王よ! あなた様だけが、この世界の全て! あなた様以外は、あなた様を輝かせるための道具にすぎない!』
「非常にダメな考え方をしているねぇ。そうじゃない。そうじゃないんだよ。ゼノリカでは……俺が頭で、お前達は手足。手足は頭の指令に対して忠実に動く。それが大原則だ……が、それは機能としての話で生死での話ではない。例えば 頭(俺)が死んでも、誰かが跡を継げばいい。場合によっては 頭より足の方が大事な時もあるだろう。残すべきはゼノリカ。俺の命令は最優先だが、俺を最優先に生かすことはない」




