78話 もう、いっそ、全員、渾身の閃拳で吹っ飛ばしてやろうか。
78話 もう、いっそ、全員、渾身の閃拳で吹っ飛ばしてやろうか。
「ちょっとはヒネれよ。天上の連中と全く同じリアクションじゃねぇか。程度の低い焼き増しは見るに耐えない。やり直し。もっと、エレガントに、もっと、セクシーに。君らには、俺の魂を震えさせてほしいんだよ。これは、君たちのために言ってあげているんだ。というわけで、あと、1500億年ほどプランを練り直して、出直してこい。シッシッ」
などと、『嫌われるための、クソクライアントムーブ』をかましていくが、配下たちの奥でまたたく光は、その程度のヌルいカマしで揺らぐような安い信仰ではない。
天下の面々の心に刻まれた輝きを舐めてはいけない。
センエースの高潔さと献身は、天下の『魂』の深部を焼きつくした。
ようするに、面構えが違った。
天下の面々は、天上と、決定的に違う点がある。
『狩る側』ではなく、『守られ続けた側』であると言う点。
天上も、天下も、敬慕度、傾倒度、憧憬度、愛情度・忠誠度・信仰度という点では『カンスト』で同じだが、現状、方向性に『やや違い』が生じているのは事実。
その『わずかな違い』が、もう一つ、『センエース的に厄介な粘り』となって、
交渉という戦場で猛威を振るう。
――天下を黙らせるための闘いは困難を極めた。
『普通に闘う方が楽だ』と、心底から思うほどに、
センエースは、この舌戦という戦場で疲弊してしまった。
(ただでさえ、ずっと闘い続けていて疲れているのに、なんで、その上で、プラスして、こんな、いやがらせをかまされないかんのだ……俺が何したってんだ。ひたすらに、頑張ってきただけなのに、なんで、こんな目にあわないといけないんだ……ふざけんな……)
あまりにもしつこい配下たちの粘りに、
センエースは、普通に、ギッチリとイライラしてきた。
配下連中は、何を言っても引かなかった。
譲歩の案を出してもパーフェクトにシカト。
もはや、完全に、聞く耳をもっていない状態。
ねじれにねじれた国会のように、
現場では、何一つ、話が進まない。
『俺が折れたら、お前らの意見を全面的に聞いてやる』
という切り札の譲歩を提示しても、
配下連中は、
『あなた様は折れない。この先も、永遠に、弱い命のために苦しみ続ける。何より尊いあなた様を苦しめることしか出来ないことが悔しくて仕方がない。どうか、自分を大事にしてほしい』
と、しつこく、食い下がってくる。
『もう、いっそ、全員、渾身の閃拳で吹っ飛ばしてやろうか』とガチで思ってしまうほどに、まったく話を聞かない、人をイライラさせるのがうまい配下たち。
そんな彼らと、センは、粘り強く交渉を続けた。
センエースの根気は、戦闘面に特化しており、こういう平場での粘りでは、それほど輝きを有していないのだが、しかし、だからといって投げ出すわけにもいかないので、センは必死に歯を食いしばって、この、『史上最高クラスにしんどい戦い』と、真正面から向き合った。
会議は踊る。
互いに一方通行の平行線。
――そんな中、センは突破口を見つけた。




