77話 もういい、もういい、もういい、もういい、もういい。
77話 もういい、もういい、もういい、もういい、もういい。
今回の7年目が経過した頃には、また、センはぶっ壊れていた。
「ギヘヘヘヒャヒャ」
ぐちゃぐちゃに引き裂かれた心身。溜まりに溜まった疲労。ここまで合計3000億年以上がんばってきた。命の限界を超えて、超えて、超えて、超えて、超えて、超えて、超えてきた。
誰よりも苦しんで、
誰よりも傷ついて、
誰よりも痛みを背負って、
誰よりも魂を穢して、
誰よりも壊れて、
誰よりも悲しんで、
誰よりも泣いて、
誰よりも恐怖に震えて、
誰よりもぐちゃぐちゃになって、
誰よりも壊されて、
誰よりも死んで、
誰よりも終わって、
誰よりも苛まれて、
誰よりも、
誰よりも、
誰よりも、
――それでも、誰よりも力強く、輝く明日を追い求める道化師。
絶望の1秒を、
恐怖の1日を、
狂気の十年を、
必死になって、折れることなく、
馬鹿みたいに地道にコツコツと、
気が遠くなるベビーステップで、
――センエースは、積み重ねていく。
★
――『352億6800万回(3500億年)』目をクリアした直後のこと。
センは、いつもの自室ではなく、
懐かしの、『真っ白な空間』にいた。
大量の椅子だけが並んでいる白い部屋。
状況を即座に把握したセンは、
心底鬱陶しそうに天を仰いで、
深く、長い、ため息をついて、
「またかよ……もういいって、鬱陶しい。ただでさえしんどいのに……もう、鬱陶しい……もう、ほんと……勘弁してくれ……」
と、泣きそうな声で、そういった。
センの嘆きが終わると同時、
田中が、『イスに座った状態』でヌルっと現れて、
「よう、調子どう? いけてる? やってるー?」
などと不愉快な声をかけてきたので、
センは普通にバチギレ顔で、
「ここに呼びつけるの、やめろ。俺にとっては、ここは『ヤンキーにとっての職員室』より鬱陶しいアウェイなんだ。だから、マジで、二度と呼ぶな。つか、話は終わっているはずだろうが。何度も蒸し返すんじゃねぇ。俺が折れるまで、あいつらは黙る。それが、俺とゼノリカの契約だろうが。俺は折れてねぇ。俺は折れてねぇから話すことは何もねぇ。というわけで、解散、解散。さっさと、俺の部屋に返せ」
「天上とは、それで話がついたけど、天下の連中とは、なんの約束もしてへんやろ。あいつら全員が、どうしても、お前に言いたいことがあるって、うるっさくて、しつっこいから、一回、話し合ってくれ」
「もういい、もういい、もういい、もういい、もういい、もういいいいい!」
『親にダル絡みされた時の思春期絶好調中坊』のような態度でうなだれるセン。
両手で頭を抱えて、
のたうちまわるように、
『もういい』を連呼するクソガキムーブ。
そんなセンのトイメンに並ぶ大量のイスに、
見慣れた顔の500人弱が出現した。
顕現すると同時、
一斉に、
『長尺のリハーサルでもしたのか』って連携具合で、
完璧に、一糸乱れぬ片膝付きを見せると、
合唱コンクール全国大会並みのハモりで、
『もうやめてほしい』
と懇願してきた。
それを受けて、センは、
一度、鼻でわらうと、
「ちょっとはヒネれよ。天上の連中と全く同じリアクションじゃねぇか。程度の低い焼き増しは見るに耐えない。やり直し。もっと、エレガントに、もっと、セクシーに。君らには、俺の魂を震えさせてほしいんだよ。これは、君たちのために言ってあげているんだ。というわけで、あと、1500億年ほどプランを練り直して、出直してこい。シッシッ」




