69話 天下は、流石にザコ過ぎる。
69話 天下は、流石にザコ過ぎる。
「栄えあるゼノリカの天下である百済、楽連、沙羅想衆の面々を、天上のメンツ同様、センエース殺しの手ゴマとして追加召喚できるようになったよ。やったね、センちゃん。家族がどっさり増えるよ」
「え、ちょっと待って。天下に所属している連中、全部で何人いると思ってんだ? 沙羅想衆はともかく、百済は100人で、楽連に至っては、全部で360人だぞ」
「つまり、天上も全部合わせると500人やな。すごいな。そいつらの経験値上げ、全部1人でせなかんのや。想像するだけでもダルすぎて、ウケる」
「ウケてる場合か、とか言っている場合ですらねぇよ。いや、てか、よくよく考えたら、数とかどうでもいいわ。天下とか、最強格でも、存在値300とかだぞ。現状の『数十兆、数百兆があたりまえ』という地獄のインフレ最前線にきて、いったい何をしようって? 鼻息の余波で吹き飛ぶだけだと思うんだが」
「そう。だから、必死になって守ってやってくれ。彼らは君の大事なオプションやから」
「ん、なんて?」
「天下は敵やない。お前の味方や。ちなみに、残機は全員で共有やから」
「まて、ゴラァあああああ!! はぁあああああ?! 残機共有? はぁあああ?! じゃあ何か? 天下が6セットぐらい死んだら、その時点で終了ってか?」
「ああ、ちゃうちゃう。天下はお前と違って復活せんから」
「ああ、なんだ、つまり、全滅しても残機が500弱減るだけか。要するに毎回の残機が3000から2500になると。その程度の縛りなら、まあ――」
「残機が減るだけちゃうよ。一回でも死んだら、永久ロストやで」
「……」
「死んで欲しくないんやったら、死ぬ気で守るんやな」
「鼻息の余波で吹き飛ぶ500人弱を完全無傷で守りながら、ダブル神化の使い手数十人と、十年殺しあうのを、ほぼ無限にやってこいって? アホか、お前。アホなんか、てめぇ」
「その上、サイコジョーカーに、イタズラな領域外の牢獄も背負っとるからな、このヒーロー。すごいな。ウケるわぁ」
そこで、センは、田中の胸ぐらを掴み上げて、
「なにワロてんねん」
と、ゴリゴリのバチギレ顔で凄んでいく。
あえて関西弁で合わせたのは、ノリでも茶目っけでもなく、正式に怒りが限界を超えたから。
「難易度下げろ。命令だ。普通に無理だろうが。いい加減にしろ」
「無理か。ほな、天下は全滅するしかないな」
「ぶっころすぞ、普通に、マジで、てめぇ」
「まあ、落ち着けや。天上とくらべたら、天下なんか、まだ、替えがきくんやから、ここは思い切って、切ってもええんとちゃうか?」
「……いいわけねぇだろ、アホか」
「でも、無理なんやろ? じゃあ、もうしゃーないやん。ここは、『王としての判断』を下そうやないか。『人の上にたつ者』として、『小事を切り捨てなあかん場面』もある。今回のコレは、その訓練や。ここらで、『切り捨て方』も覚えておいた方がええ。全部は守れんのやから。今の天上がおれば、戦力としては、まあ、十分。天下はおらんでもどうとでもなる。この分かりやすい状況を前に、冷静かつ正確な判断を下せ、センエース。そえが王の責務。お前が、今後、ずっと背負っていく宿命や」




