51話 イヤだい! イヤだい! ぼくが最強じゃなきゃイヤだい! 0を1にするのも、1を100にするのもぼくじゃなきゃイヤだい! ぼくが一番、『最強』をうまく扱えるんだい!
コミカライズ版センエース、
12話配信記念!!
1日10話投稿!
本日の3話目!
51話 イヤだい! イヤだい! ぼくが最強じゃなきゃイヤだい! 0を1にするのも、1を100にするのもぼくじゃなきゃイヤだい! ぼくが一番、『最強』をうまく扱えるんだい!
サクっと、ダブル運用のコツみたいなものを理解し始めた模様の田中さん。
その様子を、高潔の擬人化であるセンは、血の涙を流さんばかりのラリった顔面で睨みつけていた。
(はぇえよ、いくらなんでもぉおおおっ!)
ブチギレの顔で、田中と世界に盛大なクレームを入れていく。
はげしい嫉妬の炎に焼かれた醜い様、
その背中は、とても、命の王のソレとは思えなかった。
(俺が30億年かけてたどり着いた領域に、数年で追いつくとかふざけんじゃねぇええええ!)
(お前が道を作ってくれたから、ショートカットできたんや。『最も大変な0を1にする作業』をお前が担当して、その1を100にするのをワシが担当する。それでええやないか)
(イヤだい! イヤだい! ぼくが最強じゃなきゃイヤだい! 0を1にするのも、1を100にするのもぼくじゃなきゃイヤだい! ぼくが一番、『最強』をうまく扱えるんだい!)
などと、あまりにもダサ過ぎるワガママをほざいている間に、
田中は、
『ここではないどこか遥か遠く』を見つめながら、
しとやかに、
(……ああ、そうか。ワシは、ダブルを、完全に制御しようとし過ぎとるんやな。出力に振り回されんようと、無意識のうちにリミッターが強くなりすぎとった。少しは遊びもないと窮屈になりすぎる。なるほど……だいたい分かった。あとは、ちょっと調整すれば……)
そんな、『なにやら真理に届いているっぽい田中』を見たセンは、
寂しげな目で、天を仰いでポツリと、
(……俺の夏休み、終わっちゃった……)
哀し気に、そんなことを呟きましたとさ。
めでたし、めでたし。
★
――田中の戦闘力は、確実に底上げされた。
しかし、だからといって、センが置き去りにされたかというと、今回ばかりは、流石に、そういうわけでもなかった。
ダブル変身は難易度高すぎるため、頭の出来だけでは完全制御不可能。
芯の部分に触れるためには、結局のところ、『繰り返した積み重ね』が必須。
センは、ガチ無能だが、えげつない積み重ねを背負っていて、
田中は、まだ積み重ねが足りないが、破格の天才性を有する。
センと田中は、互いに、互いの長所を存分に尖らせて、互いのダブルをぶつけ合わせる。
じゃかん、田中の方が有利ではあるのだが、センの『残機3000』を削り切ることは不可能な差。
『10年かけて一度殺せるか否か』という次元で、2人は互いに武を高め合い続ける。
ひたすら互角に戦い続ける10年間を、何度も何度も何度も繰り返す。
★
間違いなく互角だった。
なんだったら、しばらくは、センの方が強かった。
センが積み重ねてきたものは、本物だったから。
それだけは、絶対に事実だったから。
けれど、田中も『積み重ねを経た』ことで、
田中は、ついに、センを完全に抜いてしまった。
抜いただけでは飽き足らないのが田中の天才性。
センと田中の差が、徐々に開いてくる。
ウサギと亀のレース。
気付けば、亀のアドバンテージはとっくに尽きて、
ウサギの独走状態になってきた。




