42話 『人の器が脆い』という現実と向き合うところから始める。
42話 『人の器が脆い』という現実と向き合うところから始める。
(なんか、『ヒカル〇碁』で、そういうエピソードがあった気がするなぁ……サイの強さにビビって、踏み込めなくなるみたいな。……そういう精神性のものもそうだし、肉体の方でも、同系統の歪みが生じている……これは……いわゆる、イップスだな………スランプ的なイップスでもあるし……リハビリが上手くいっていないタイプのイップスでもある気がするな……)
一度、ケガをした選手などに多くみられる現象。
肘を壊したことがある投手なんかは、
『また壊れること』を極度に恐れて、腕を思いっきり振れなくなる。
(PTSDで失語症になる……みたいなのとも、似たような状態かもなぁ。……人の体ってのは、無駄に繊細だから……もっと、大雑把でいいんだが……望み通りになってくれない鬱陶しさも、人が根源的に持つ縛りの一つ……)
自分自身の分析を進めるうちに、
センは、自分が、この数千億年の間で、かなり、『色々な意味で疲弊している』ということに気づいた。
人の肉体と精神は、センエースが思うほど強くない。
『人間の心身』は、『センエースの根性』を支えられるほどの器ではない。
(人の器が脆いってこと……その現実と向き合うところから始めるか……長い旅になりそうだ……)
しんどそうに溜息をつくセン。
実際、これは、おそろしく難易度の高い病気。
打撲や骨折なんかとはレベルが違う。
いわば、魂の病気。
この病が治らないまま人生を終える者は山ほどいる。
手術も薬も、大した意味をもたない、最高クラスの奇病にして難病。
(……俺自身の弱さを……どう処理していく……)
必死に頭を悩ましながら、
センは自分自身と向き合っていく。
★
結論を言うと、センは、この問題に、長く苦しめられることになった。
『いうて、100万回ぐらいループすれば克服できるっしょ』
と、思っていた時期がセンにもありました。
しかし、『700万回』――年数にして『7000万年』を超えてもなお、
センの体はピクリとも動いてくれない。
「……こんなにしつこい病気だとは思わなかったなぁ……」
ループ直後、動けるようになったところで、
センは、『休憩で眠る』というルーチンも忘れて、
両手で頭を抱えて、髪をかきむしる。
「……治るきざしがまったく見えない……やばいって、これ……俺、いつまで、無抵抗のまま殺されつづけてんだよ……バリアの精度は上がっていくけど、このままだと、戦闘力が落ちる一方……」
この7000万年の間、センは、一度も、まともに戦闘をしていない。
ジっと、動かずに、ただ、田中たちからの猛攻を受け続けただけ。
「このままだと、閃拳の打ち方すら忘れるんじゃねぇか……てか、閃拳ってどうやって打ってたっけ? そもそも、閃拳って、どういう技だっけ? 確か、キックだったか? それとも、タックルか? まさか、ただの正拳突きってことはないよな。俺の奥義を代表する技が、まさか、ただの正拳突きだなんてオチはありえないよな。いやぁ、ないない。そんなわけがない。俺は、もっと、味わい深い、凝った男だよ、うん」




