40話 親の仇でも殺すような勢いでアラームを止める舞い散る閃光。
40話 親の仇でも殺すような勢いでアラームを止める舞い散る閃光。
田中が魔カードを一枚取り出して、破り捨てながら、
「――はないちもんめ――」
特異なバグを使うと、センの体が、一瞬、淡い光に包み込まれる。
直後、センの変身が解除された。
自由になったと理解したセンは、
「ヨグ、今回、俺がタイムリープしてから、何分たった?」
「5分になるかならないか」
それを聞くと同時、
センは、スマホの時タイマー機能を操作して、
25分にセットすると、
そのまま、ベッドにルパンダイブして、
すーすー、と、秒で寝息をたてはじめた。
全力で泥のように寝ているセンの横で、
ヨグが、田中に、
「解除してよかったのか?」
そう問いかけると、
田中は、センの勉強机に、ドカっと腰をかけて、
「命の王の、本気の誓いを無碍にはできんやろ」
「……」
と、そこで、田中は、ぼそっと、
「……あ、だんだん、記憶も回収できてきた。えっと……ああ、前のセンは……どうやら、狂気の集中力で、ドリームオーラとオメガバスティオンの合わせ技を十年使い続けたみたいやな……美しいやないか……さすが、命の王様は格が違う」
「……」
「なんだかんだで、ワシも、センとの付き合いが長くなってきたからなぁ。センの根っこみたいなもんが、だいぶ理解できるようになってきた。こいつは、やると言ったらやる。本気で誓ったことを、おざなりにはせん」
「……」
「どうやら、センは、ワシのことを、かなり信頼してくれとるようやけど……それ以上に、わしは、舞い散る閃光センエースのことを信頼しとるんやで」
★
25分経過のアラームが鳴ったと同時、
泥のように眠っていたはずのセンが、ベッドから飛び上がって、
親の仇でも殺すような勢いでアラームを止めると、
「究極超神化3」
と、すぐさま、変身し、
続けて、
「真醒・究極超神化」
と、ダブル変身を決め込んでいく。
「……寝起きとは思われへん軽快なムーブやな、ほんまに寝とったか?」
「俺が本気を出した時の寝起きは、今日だけに限らず、だいたい、いつも、こんな感じだ」
事実だった。
センは、『ガチでやることがある朝』に『目覚まし時計』で起きると、
どれだけ深いノンレム状態であろうと、
アラームが鳴ると同時に、目をガっと開き、
必ず2秒以内にアラームを止めて、
すぐさま、必要な支度を開始する。
これに関しては、努力どうこうではなく、生まれつきの資質。
基本的に、センの肉体は『努力ができる下地』ができている。
かといって『だから努力ができている』というわけではない。
脳を持つ生き物が、みな、例外なく脳を極限まで使っているわけではないのと同じ。
下地があるのはあくまでも最低限で、大事なことは、向き合う覚悟があるかいなか。
――そこで、センは、ヨグと田中、両方に視線を向けて、
あと、自分の中にいるハスターにも向けて、
「ないとは思うが、もし、俺がアラームのセットをミスったときは、どんな方法を使ってもいいから、30分が経過した段階で、たたきおこせ。いいな。――返事はどうしたぁ! 俺が命令したら、『はい』か『イエス』かのどちらかを、喉を殺す勢いで叫べ。常識だろう、バカどもが」




