39話 これは、神の王としての……命の王としての命令だ。理解したか、正統なる銀河の支配者よ。
39話 これは、神の王としての……命の王としての命令だ。理解したか、正統なる銀河の支配者よ。
「おい、セン。聞いているのか?」
「聞いているわけねぇだろ、黙ってろ。殺すぞ」
フラットな小声の早口。『感情が見えない』という攻めた手法で、『煌めく感情』を全力で伝えていくスタイル。
そんな、生産性皆無の時間を過ごしていると、
ハスターが現れて、
「センエース、契約の時間だ」
言い切った直後、
「――うぉっ」
ハスターは、センと一つになり、
そして、自動的かつ強制的に、ダブル変身が発動する。
またもやピクリとも動けない状態になったセンは、
普通に、ぽろぽろと泣きながら、
「10年も極限状態で頑張ったんだから、せめて、5分ぐらい、しっかり休憩させてよ、鬼畜どもぉ……ひーん、ひーん」
『転んでヒザをすりむいた園児』ぐらいの勢いで、
ぽろぽろ、ぼろぼろ、と涙が止まらないセン。
泣いている途中で、
田中が現れて、
「タイムリープ、どうやった? うまいこと……って、あ、もう、ダブル変身状態はできてんねや。てことは、もう、200億回以上はやったってことやな」
状況をサクっと理解した上で、田中は、首をかしげ、
「……てか、なんで、泣いとんの? いや、まあ、この無限リープ地獄は、普通に泣きたくなるとは思うんやけど。……なんか、特別な理由があるんやったら、聞くで?」
「10分……いや、もう、5分でもいいから、これ解除して、お願い。……ちゃんと、やるから。ちゃんと、ダブル変身状態で、お前らとやりあうから。……ちょっと、マジで、休憩したいだけだから……マジでマジでマジで頼む」
「かなり無茶なカスタムで、『だるま』を使った上での縛りやから、ちょっとやそっとでは解除できんなぁ」
「……田中……」
「どしたん?」
「今まで、俺は、お前にたいして、いろいろと暴言を吐いてきたが、それは、ある種の信頼があっての話……ある種の明確な人間関係の土台があったからこその、いわば、バラエティ的プロレスだった……」
「ん、わかっとるけど。で?」
「冗談ぬきで、お前の大事なもん、全部ぶちこわすぞ。いやなら、解除しろ」
「……こっわい目やなぁ。バチバチのガチやん」
「……誓ってやる。……毎回、タイムリープしてから30分後には、必ずダブル変身して、10年後に死銀の鍵が発動するまで、ずっと、ダブルをキープすると誓ってやる。俺の誓いは、政治家のマニュフェストとは違う。俺がやると誓ったことは絶対にやる。……だから、解除しろ。休憩させろ。これは、神の王としての……命の王としての命令だ。理解したか、正統なる銀河の支配者よ」
「……」
田中は、数秒だけ黙ったが、
「おおせのままに」
と、『本気の服従』ではないが、しかしチョケているわけでもない、
という、かなり絶妙なバランスの返事をしてから、
魔カードを一枚取り出して、
破り捨てながら、
「――はないちもんめ――」
特異なバグを使うと、
センの体が、一瞬、淡い光に包み込まれる。
直後、センの変身が解除された。




