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36話 俺は、ここまでバカじゃない。俺はもっとマシ。


 36話 俺は、ここまでバカじゃない。俺はもっとマシ。


 他の作品に対しては、基本的に、『おもしろかった』か『そうでもなかった』以外の感想をあまり持たないセンだが、『異世界転生はもう飽きた』に関しては、濁流のように感想が湧き出てくる。


「……『襲ってくる敵や絶望の質と量がハンパじゃなくて苦しい』『理想のヒーローを望んでいる』っていうこの2点だけは共感できたかな……ただ、それ以外は、全く共感できない。この『S・A』の考え方は、俺の思想と似ている部分もなくはないが、シルエットが似ているだけで、中身は全然違う。まず、俺は、こんなにバカじゃない。あと、描写的に、俺は、確実に、こいつよりイケメンだ。あと、人間性の正常性も、俺の方が上だな。あと、俺は、こいつほど、バカみたにテンプレを連呼したりしない。俺は、もっと、こう……風雅な感じで、あでやかにテンプレを使う」


 なぜかは分からないが、センは、自分が『S・A』とは違うということを頑なに主張している。

 その行動に意味があるようには思えないのだが、

 しかし、センは止まらない。


「こいつは、単純に要領が悪い。あと、思想がキモい。もう少し、スマートに生きてくれないかね。友達が一人もいないのも問題だな。俺も友達がいないが、それは、俺が望んでいないだけ。つくろうと思えばいくらでもつくれる。ただ、こいつは違う。こいつは、友達を望んでも無理。ここが俺との決定的な差だな」


 ぐだぐだと、『異世界転生はもう飽きた』に関する意見を述べた後で、


「……時間つぶしにはなったが、それ以上の何かがあったとは思えないな……なんで、この本だけが、特別扱いされて、禁書エリアに封印されていたのかサッパリ分からん」


 そう言いながらも、

 センは、そこで、天を仰ぎ、

 一つ、タメ息をついてから、




「俺は……神界の深層を統べる暴君にして、運命を調律する神威の桜華……」




 それは、『S・A』が、強大な敵を前にした時、

 自分が何者であるかを再確認するために、

 ありったけの勇気を絞り集めて並べる名乗り。


「このキメ台詞だけはカッコよかったな……使わせてもらおう」


 頭の中のお気に入りリストに登録するセン。

 図書館・禁書エリアでの収穫は『セリフ一つ』。


「読破するまで、けっこうな時間がかかったってのに、収穫はこれだけか。……んー……まあ、『大きな成果』とは言えないかもしれないけれど、何も収穫がないよりはマシかな。さて、それじゃあ、そろそろ、召喚の鍛錬に戻ろうか。で、次に、基礎武術を磨いて……で、そのあとで、見せてもらおうか。『スペシャル開発ルーム』の性能とやらを」



 ★



 ――50億年が経過した。

 ジンワリと秒針が過ぎていく、ゆったりとした一日を積み重ねて、今日に辿り着いた。

 弟子を育成し、エグゾギアを改造し、仮面を磨き、召喚技能を底上げし、図書館で見聞を広げ、真摯に武と向き合って、スペシャルを開発する。


 ……そんなことを、何度も、何度も、何度も、何度も、繰り返した。


 そうやってたどり着いた50億年。

 センは、時計を見て、


「……まだ折り返しでもないのか……」


 『崩れた魂』が弱音を漏らす。


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[一言] つくろうと思えばいくらでもつくれる。←友達を作れない奴のセリフw
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