38話 センエースの輝きは、灰になってすら、とどまることを知らない。
38話 センエースの輝きは、灰になってすら、とどまることを知らない。
(ドリームオーラとオメガバスティオンの組み合わせか……オメガバスティオンという『ほとんどバグ的な現象』を、『魔法』という枠内に落とし込む行為……狂った根性と、突出した集中力、そして、人間失格(高貴なワガママ)を持つお前だけの妙技。お前にしか出来ん不可能。お前の集中力は、『田中家』のソレとはまた別のもの。根本的にベクトルが全然違う。……センエース、お前は美しい)
田中は、ただの本音を口にした。
ぶっちゃけ、いつも思っていることではあるが、シラフの時はなかなか言えたものではない。
感動が限界を突破して、かつ、『センがまったく聞いていない』という前提がなければ、なかなか言葉にできない。
田中の絶賛を、センは、やはり、まったく聞いていない。
溢れる鼻血を拭うことすら忘れて、
狂ったような集中力をぶん回し、
ドリームオーラ・オメガバスティオンの運用に全意識をぶちこんでいる。
こうなったら、センは要塞。
もはや、今の田中たちで削り切るのは難しい。
★
結局のところ、センは、
それから一度も殺されることなく、
10年耐久をクリアしてみせた。
10年が経過した時、
センの全てが、真っ白の灰になっていた。
限界を迎えたがゆえの灰化ではなく、
命の全てを限界以上に燃やし尽くしたがゆえの灰化。
殺すまでもなく、センの肉体はパラパラと砕けていった。
その様すら美しい、と田中は思った。
――センエースの輝きは、灰になってすら、とどまることを知らない。
その、あまりの美しさに、涙を流す田中。
センエースの、常軌を逸した献身に言葉を失う。
この膨れ上がった感情を、持ち越せないのが口惜しい。
そんなことまで考える始末――
★
「……」
意識を取り戻した時、センは、自室で、ゲ〇ムボーイ片手に、
ムーア最終の作成に取り組んでいた。
「……ぶはぁあああっっ」
潜水で世界記録を出した競泳選手のように、センは、深く、深く、息を吸い込む。
この時点のセンは、ハスターが強制装備解除されている状態なので、『ダブル変身状態』も同時に解除されている。
自由に動く手足に感動しつつ、
「……ふぅうう……はぁあああ……」
解放感に浸る。
10年間、ピクリとも動けなかったし、ずっと、極限集中状態でもあったため、『つかの間の安息』である『今』に対する感動もひとしお。
ほんのわずかな、自由をかみしめていると、
「今のうちに、ポイントを振り分けておいたほうがいいんじゃないか? ハスターを装備したら、また、ダブル変身状態になって、動けなくなるぞ」
勝手に顕現したヨグが、そう声をかけてきた。
センは、『ここではないどこか』を見つめているような、『聖なる虚空しか見つめていない目』で、ただ、まっすぐに前を見つめ、丁寧に、たおやかに、ヨグの言動のすべてをシカトする。
「おい、セン。聞いているのか?」
「聞いているわけねぇだろ、黙ってろ。殺すぞ」
フラットな小声の早口。
『感情が見えない』という攻めた手法で、
『煌めく感情』を全力で伝えていくスタイル。




