37話 オメガバスティオンという『ほとんどバグ的な現象』を、『魔法』という枠内に落とし込む。
37話 オメガバスティオンという『ほとんどバグ的な現象』を、『魔法』という枠内に落とし込む。
(もっとだ もっと)
センエースは、さらに自分のドリームオーラと深く向き合っていく。
ずっと、無抵抗状態のまま、大嫌いな天才と、大事な家族に、フルボッコにされるという、桁違いの地獄の釜の底で、センは、貪欲かつ愚直に、『バリアの向上』だけを、真摯に求め続ける。
★
――残機が残り150を切ったところで、
センは、
(……見える……俺にも、敵が見える……っ)
それは、単なるテンプレではない。
ガチの、超精度を魅せつけていくセン。
『辿り着いたセン』は、ドリームオーラに『オメガバスティオン』の要素を混ぜた『ほとんど無敵バリア』の開発に成功。
かなり短時間ではあるが、敵の攻撃を、ほぼ完全に防ぐことができるバリアを展開できるようになった。
それで、ひたすら、田中たちの攻撃をパリィしていく。
攻撃があたる瞬間だけの、コンマ数秒だけの閃光のような展開を、何度も、何度も、繰り返して、できるだけダメージをくらわないように必死。
もちろん、完全に防ぎきれているわけではない。
これは、おそろしく難易度が高い神技。
普通に、頻繁にミスってダメージを受けている。
しかし、単位時間当たりの被ダメージ量は、明らかに軽減できている。
その様子を見た田中は、
(ドリームオーラとオメガバスティオンの組み合わせか……オメガバスティオンという『ほとんどバグ的な現象』を、『魔法』という枠内に落とし込む行為……狂った根性と、突出した集中力、そして、人間失格(高貴なワガママ)を持つお前だけの妙技。お前にしか出来ん不可能)
田中が、テレパシーで声をかけるが、
センは一切反応しない。
ずっと、大量の鼻血を垂れ流しながら、
パリィに完全集中している。
こういう時のセンエースの集中力は格が違う。
もはや、人とは思えない、狂気のゾーン。
そんな、『己の奥へとどっぷり浸かっているセン』の極限状況などおかまいなしに、田中は、望むがままのおしゃべりを続行する。
(お前の集中力は、『田中家』のソレとはまた別のもの。根本的にベクトルが全然違う)
『集中力』には、大別すると2種類が存在する。
持続型と瞬発型。
センエースの集中力は前者で、
田中家の集中力は後者。
この二つは、短距離走者と長距離走者の違いと類似していて、『生まれつきの脳のあり方』で決まる。
基本的に、『持続型の集中力』は『瞬発型の集中力』よりも『集中力の深度』が浅い。
50メートル走で、長距離走者が短距離走者に勝てないのと同じ理屈。
ただ、センエースの集中力は、かなりの特別性で、基本状態の段階で『冥王星まで行って帰ってくることも容易いと言う超持久力』を有しており、かつ、『大事なものがかかっている時の根性』というブーストがバフられている時限定だと『瞬発型を置き去りにした深度まで長時間潜れる』という『掟破りの異常なスペック』を魅せる。
(……センエース、お前は美しい)
――この極限状態の中で、センエースは、ドリームオーラの精度を、限界まで磨き上げていく。
その結果、少しずつ、少しずつ、『一回死ぬまでの時間』が増加していった。
100日弱で2800回死んでいたセンが、ドリームオーラを鍛えた結果、なんということでしょう。
そろそろ『一年を超えるほどの時間』が経つと言うのに、残り残機100を、まだ切っていないではありませんか。
匠による『魔術師のごとき華麗なる努力』によって、センエースは、生まれ変わったのです。
(もっとだ もっと)
センエースは、さらに自分のドリームオーラと深く向き合っていく。
ずっと、無抵抗状態のまま、大嫌いな天才と、大事な家族に、フルボッコにされるという、桁違いの地獄の釜の底で、センは、貪欲かつ愚直に、『バリアの向上』だけを、真摯に求め続ける。




