32話 終わっているのは田中だけ。
32話 終わっているのは田中だけ。
「だいぶ頑張ったな。まだまだゴールは遠いが、けれど、まあ よく頑張った」
「喝采も、賛美もいらない。俺は、俺のワガママのためだけに舞う修羅。それ以上でもそれ以下でもない概念の集積所。それでいい。それがいい」
センが自分に浸っていると、
そこで、
ハスターが、背後から近づいてきて、
「……センエース、契約の時間だ」
と、前置きもなく、そう言った。
そんな彼に、センは、
「……お前も、よく頑張ったな。誇っていい」
と、心からの『労いの言葉』を投げかけた。
ハスターは、首を傾げて、
「はぁ?」
当然の反応しめした彼に、
センは、超然とした目で、
「お前だけじゃない。シューリもアダムもミシャも、三至も、五聖も、九華も、十席も、みんなよく頑張った。俺は、お前ら全員を誇りに思う。終わっているのは田中だけ」
そこで、田中が、ひょっこりと顔を出して、
「タイムリープ、どうやった? うまいこと、いけた? いい感じに殺された?」
と、声をかけてきたので、
センは、田中に向けて中指を立てて、
「死ね、クソッタレ。この、ドSキチ◯イ鬼畜野郎が。報いを受けろ。死で償え」
「また、どえらく、ヘイトが暴走しとるけど、一体、一個前のワシはお前に何をしたんや?」
「お前は塾のテストで俺を超えやがった。絶対に許さない」
「いつの話してんねん!」
「確かに、かなり古い記憶だ……それでも、鮮明に刻まれている。すべての記憶が、俺の胸に」
と、エモい感じでそう言っているセンを尻目に、
田中は、
「……あ、だんだん、記憶も回収できてきた。えっと……ああ、今、200億回目か。すごい回数やっとんな……てか、体感時間にして2000億年以上前の逆恨みを、今言うて、どうしたいねん!」
どうでもいい会話を経てから、
互いに、軽くおちつくと、
「しかし、200億回クリアとか……ようやるな、ほんま。ワシが自分で設定した覚醒プログラムやけど、こんなもんを、ガチでこなせるヤツがおるってことに、驚愕を禁じ得ん」
「……で? ……もう、そういうのはいいからさっさと、ボーナスについて話せ。どうせあるんだろ? 今度は、どんな嫌がらせで俺をイジメる気だい、ジャイアン」
「人聞きの悪いことを ワシの善意と献身が理解できんようでは、命の王を名乗る資格はないで」
と、軽く前置きをしてから、
こほんと咳を吐き、
「ティラリラリン! 200億回目ボーナスは、ダブル神化の自動開放や。本来、結構なポイントが必要やけど、200億回を突破したご褒美として、特別にコストなしで解放したる」
「おお、珍しく、マジのボーナスじゃねぇか。どうした。心を入れ替えたのか? でも、もう遅いぞ。今後、お前が何をどうしようと、俺の怒りは変わらない。お前は俺に殺される。わかっているんだ。この未来だけは確定している」
そんなセンの戯言を、田中はバキバキにシカトして、
「ダブル神化は、かなり大変やけど、未来を切り開くためには必須の技能。ここから先は、ループ直後のこの時間も、常にダブル神化に変身して、魂魄の随に、ダブル神化を刻み込め」
と、だいぶヤバめの戯言をぶちこんできた。




