31話 RTA勢向けに、難易度が鬼カスタムチューンナップされたSEKIR◯。
31話 RTA勢向けに、難易度が鬼カスタムチューンナップされたSEKIR◯。
『ビッグ努力』と『どこでも努力』と『地球破壊努力』を華麗に駆使して、
どうにか、こうにか、なんとか、目の前の困難を乗り切ったセン。
――その『重すぎる負荷に耐える鍛錬』を、その後も、ずっと、徹底的に繰り返した。
とにかく、少しでもマシな状態にするための努力。
最初の方は、ある程度、うまいこと伸びていくが、だんだんと、成長率に陰りが出てくる。
なんだってそう。
ダイエットとかでもそう。
150キロの巨漢がダイエットを始めたところを想像してみれば、今のセンの状態が分かりやすい。
最初は、ちょっと食事制限をするだけでも、ぽんぽーんと10キロぐらい痩せていたが、途中で、停滞期に入り失速、停滞期を超えても、初期ほどの劇的な変化は見られなくなる。
(ちゃんと運用しようとすると……『3』って、かなりむずいな……)
雑な運用でもそこそこ強いのが3の特徴。
バランスがよくて初心者におすすめ。
入門編としてベストの変身。
――それは間違いないのだけれど、突き詰めていくと、実は、難易度が高い玄人向けの変身だということが判明する。
『ジャスト入力パリィがシビアな死にゲー感』とでも例えようか。
ガードが強いので、パリィしなくても、低次の闘いでは問題ない。
簡単操作で、誰でもクリア可能な連打ゲー。
ただ、高次の闘いを求めると、『異様に難易度の高いパリィを一生成功させ続けないといけない』という、超絶難度の死にゲー。
『RTA勢向けに難易度が鬼カスタムチューンナップされたSEKIR◯』とでも表現すべき異次元の難易度。
高次の死にゲーは、もはや『特異なリズムゲー』という『謎の真理』の奥底で、センはあがき、もがき続ける。
意識する。
しなやかなリズムで跳ねるように。
最初はテンポを遅くして、徐々に目標となるペースを求めていく。
繰り返すうちに、己の中で、苦手とするフレーズがあることに気づき始める。
得意なことは少ないのに、苦手なことや、なかなか慣れないことは山のようにある。
厄介な人生。
才能がない人生は、本当に生きづらい。
それでも、歩んでいくと決めた。
だから立ち止まらずに歩き続ける。
ここはまだ、スタート地点から半歩踏み出した地点。
ゴールどころか、中間地点すら見えない場所で、今日もセンは、真摯に、自分の限界と向き合い続ける。
★
「……」
意識を取り戻した時、センは、自室で、ゲ〇ムボーイ片手に、
ムーア最終の作成に取り組んでいた。
「……すぅ……はぁ……ふぅ……」
深く、遠く、厚く、
センは呼吸を繰り返す。
その目は、達成感に満ちていた。
困難を乗り越えた者特有の瞳。
――挫折と絶望を見事に打ち砕き、けれど、そこで満足せず、まだまだシッカリとゴールを見据えている、泰然とした視線。
一つの到達点を超えて、けれど、驕ることなく、その先を見据えている者の眼。
――そこで、ヨグナイフが、センの目の前に顕現して、
「だいぶ頑張ったな。まだまだゴールは遠いが、けれど、まあ よく頑張った」
と、労いの言葉を投げかけてきた。
センは、天を仰いで、
「喝采も、賛美もいらない。俺は、俺のワガママのためだけに舞う修羅。それ以上でもそれ以下でもない概念の集積所。それでいい。それがいい」




