30話 地球破壊努力。
30話 地球破壊努力。
(このペースだと、あと2年以内に残機がつきる! 助けて、タナえもん! この状況を打破する、なにか、画期的な秘密道具を出して!)
(しょうがないなぁ、セン太くんは。ぱぱぱぱっぱぱぁ~、ビッグ努力ぅ)
(それはもうやってる! 頭おかしいレベルで、ずっと、やっている!)
(あと、『どこでも努力』と『地球破壊努力』あたりがおすすめやけど、どれにする?)
(根性論しかないんかい、くそがぁ! 天才が聞いてあきれる! お前ほどの無能はそういない!)
(ガチの絶望や困難を打破することが出来るんは、ガチンコの努力だけ。フラッシュアイディアでも秘密道具でも裏技でもバグでもなく、純粋な泥とヘドと流血にまみれた『確かな一歩一歩』だけが、輝く明日をつかみ取れる『たった一つの希望』なんやで、セン太くん)
(今は、正論なんか聞きたくない! 正論なんてクソだ!)
★
縛りの負荷が増えて、追い込まれるほどに、センエースは光り輝く。
この特質は、別に、センエースに限ったことではない。
逃げない勇気とド根性があるならば、
負荷と追い込みは、人をもっとも輝かせる研磨剤。
この辺は、特に、スポーツの世界では、当たり前のこと。
適切な負荷と、たゆまぬ努力と、逃げない精神。
この3つだけが、次のステージにすすむためのたった一つの方法。
たいていの人は、ストレスに耐えきれなくなって逃げてしまう。
別に悪いことじゃない。
逃げたって別にいい。
『立ち向かう気力が尽きて、逃げる決意が固まる』ということは、『その場所は自分に合わなかった』という証拠。
サメとタカの話は世界の摂理。
海で最強のサメは空だと堕ちるだけ。
空で最強のタカは海だと溺れるだけ。
自分にあった場所で頑張ればそれでいい。
……『一般人』は。
――『ヒーロー』は違う。
合おうが合わなかろうが、踏ん張って、
血ヘドをまき散らすことしか出来ない。
逃げられない。
逃げたら世界が終わるから。
全ての命がすがりつく最後の砦――センエースに逃げ場はない。
自分が折れたら全部終わる。
――その事実を理解しているセンは、
だから、
「ふぅう……ふぅうう……10年……ギリ……ギリだが……超えたぁ……っ」
『ビッグ努力』と『どこでも努力』と『地球破壊努力』と『タケ努力』と『もしも努力』と『四次元努力』と『ほんやく努力』と『タイム努力』と『独裁努力』を華麗に駆使して、
どうにか、こうにか、なんとか、目の前の困難を乗り切ったセン。
とにかく、生き残ることを考えて、
少しでも、究極超神化3を理解しようと没頭し続けた。
その結果、なんとか、2500回ぐらい死んだタイミングで、
『――ちょっとだけ……見えてきた……か?』
と、究極超神化3の真髄のシッポをつかむことに成功した。
もちろん、まだまだ、全容は見えていない。
遠くにうっすらと見えている氷山の一角を認識しただけ。
それでも、前に進むことはできた。
折れずに、逃げずに、あがき続けた結晶が、
センエースの全てを支えてくれる。
『……まだ、ふぞろい……テンポがズレている……もっと、調整……調整……』
自分の中で鳴り響く音が、まだまだ不協和音であるという認識に届いた。
それだけでも一歩前進。
大きな前進。
『今の俺は……歌で言えば、正しい呼吸が出来ていない状態……だから、当然、カラオケで言えば、60点級のクソ……』
表現力とか、音程とか、ビブラートとか、そんなレベルに達していない。
単純にまともな声が出ていない。
『そこを調整しなければ話にならない』という事に、
2500回殺されることで、ようやく気付いた。
気づいてからは、調整を繰り返した。
ハッキリ言って、うまいこと調整は出来ていない。
しかし、目に見えて変化は出てきた。
ジャ◯アンリサイタルから、普通に下手な歌になってきた感じ。
どうにか、必死の調整を繰り返した結果、
3000回の残機を削り切られることなく、
センは、今回の『10年間』を乗り越えることが出来た。




