15話 どうした。命の王の命令が聞けんというのか、正統なる銀河の支配者よ。
15話 どうした。命の王の命令が聞けんというのか、正統なる銀河の支配者よ。
(なんかないか? 方法。もう一個、高く飛べる方法。別に、あいつらを殺さなくても、あいつらを、もっと輝かせる方法。……てか、50億回ボーナス的なのはないのか?)
(100億回目ボーナスはあるけど、50億回目はなんもないな)
(……100億回目ボーナスを、もう今の段階でぶち込む……みたいなことはできないか?)
(できんことはないけど……正直、やめとった方がええと思うで。こっちも、色々と考えた上で、プログラムを組んでんねん。ただでさえ、ハーレムモードを前倒しにしてんのに、これ以上――)
(センエース・ヴィ・ブリタ〇アが命じる。やれ)
(……)
(どうした。命の王の命令が聞けんというのか、正統なる銀河の支配者よ)
(……ちなみに言うとくと、100億回目ボーナスは『イタズラな領域外の牢獄』が常時発動するっていう、鬼畜な地獄なんやけど――)
そこで、センは、食い気味に、
(センエース・ヴィ・ブリタ〇アが命じる。いったん、持ち帰らせろ)
★
センエースは悩んだ。
『イタズラな領域外の牢獄』のヤバさは、記憶の奥に、ちゃんと刻み込まれているから。
その地獄を背負うに至った経緯の前後が、若干曖昧になってはいるものの、ソレがどれだけしんどかったか、という点に関しては、しっかりと脳裏にやきついている。
(あれを……ずっとかぁ……)
一度、体験しているから分かる。
それが、どれだけしんどい地獄か。
まったく知らなければ、『わからんけど、とりあえず、やってみる。後は野となれ山となれ』の精神で、無我夢中に飛び込むことも出来るかもしれないが、経験的記憶(重度のトラウマ)があると、なかなか、そうするわけにもいかないのが人のサガ。
人は、経験値を積み重ねることで強くなる生き物だが、
恐怖体験の抵抗度に関しては、積み重ねた分だけ弱くなる場合もある。
「うーん……うーん……」
だいぶ悩んだ末に、
センエースは、
「……ぐぅう……くそがぁ……ぐぅううううううううううううう」
結局、『100億回目ボーナス』の前倒しを受け入れる事にした。
盛大に奥歯をかみしめて、ハードラックとダンスする意志を示す。
センエースの異常な覚悟を前に、世界が、彼の正気を疑っている。
★
――『イタズラな領域外の牢獄』。
それは、『センエースの心を殺す事だけに特化した地獄』である。
誰もが心に飼っている『自分を食い破ろうとする弱さ』――それが常に暴走するようになる。
常時、この世界全体が『イタズラな領域外の牢獄』として機能するようになるという、センエースからすれば、本当に、ふざけきった地獄。
「……」
『イタズラな領域外の牢獄』を受け入れると決めてループした最初の朝。
意識を取り戻した時、センは、自室で、ゲームボ〇イ片手に、
ムーア最終の作成に取り組んでいた。
「……」
センは、ゲームボ〇イを放り投げて、
ベッドにもぐりこむと、
ふとんをかぶって、ギュっと、小さくなる。
そんなセンに、
「ボーナスタイムだ。今回獲得した経験値を割り振っていけ」
勝手に現れたヨグが、そう声をかけてきた。
センは、
「……なんの意味がある?」
と、布団をかぶって小さくなったまま、
「意味ないよ。頑張っても意味ない。やるだけ無駄だ」




