10話 閃化。
10話 閃化。
――手加減された上で、ボコボコにされている田中は、
(ああ、これは、もう、あかんな……今のままでは、センエースのトレーニングとして成り立ってない。このしょぼい負荷では、ただの健康体操。……しゃーない……だいぶ早いけど、次のステップに進もうか)
(次って?)
(お待ちかね。ハーレムモードの搭載や。お前の趣味嗜好を完璧におさえた美女を三人用意した。楽しんでくれ)
(……ああ、そういえば、まだ、来てなかったな……)
しんどそうな顔でそうつぶやくセンの前で、
田中は、指をパチンと鳴らした。
すると、
空に、三つのジオメトリがあらわれて、
その奥から、絶世の美女が三人現れる。
その三人の目には、激しい憎悪が刻まれていて、
その全てが、センエース一人に降り注ぐ。
「シューリ! アダム! ミシャ! お前らに指示は出さん! 好きに暴れてくれたらええ!」
現れた三人の女神に、
あえて『自由な暴走』というオーダーをあたえる田中。
三女神は、そろって、
「「「――閃化――」」」
特殊モードを惜しみなく投入していく。
それを見たセンは、田中に対し、
(おい、どういうこと? 俺に対する憎しみがメラメラ暴発寸前状況で、『心が俺に寄り添っていないとダメ系の変身である閃化』をするって、どういう矛盾?)
『センエース化(閃化)』は非常に強力な覚醒技だが、『狂信』の精度がマックスでないと使えないという厄介な限定条件を持つ。
ようするに、センエースを愛していないと使えない。
だから、心にセンエースを抱いていない今の配下たちは使えない。
――のだが、
(この三人の、お前に対する『感情』の度合は、配下連中よりも、さらに数段階上の状態にある。大半を憎悪に変換させたが、それでも、こぼれ出る想いだけで閃化できとる。本当にすさまじい想いや。感服する)
(……)
(……ちなみに、この三人の状態って、まあまあのバグ状態なんやけど、真醒・裏閃流は使わんほうがええで。お前を攻撃しても心に変動が起きんように調整しとるギリギリの状態やから。かなり繊細な調整をしとるから、下手に、構築の部分破壊とかしたら、マジでやばい。調整部分のバグなんか解除してもうたら、こいつら、お前に攻撃するたびに心を痛めるってことになるからな。血の涙を流しながら、お前と戦う、みたいな感じになると思う。最悪、心が壊れる。それでもええなら、好きにしたらええけど)
(……あらゆる手を使って、俺に嫌がらせしてくるな。せっかく覚醒させた力まで、普通に無力化してくるとは……この辺まで全部計算か?)
(さすがに、これは偶然や。お前の真醒・裏閃流に関しては想定外やから。……いや、もしかしたら、案外、このへんも、偶然ちゃうんかもな。すべては必然で、すべての運命が、センエースを祝福しとる……ということかもしれん)
(すべての運命に祝福された結果、俺は、地獄の窯の底を這いずり回っている、と。大事な家族に囲まれて、ボッコボコにされる無間地獄に落ちている、と。すごいね、運命の祝福ってやつは。そこらの呪いなんか目じゃないぜ。ちなみに、ちょっと、一回、祝福って言葉を辞書で調べてくれる? たぶん、衝撃を受けると思うから)




