7話 バグを殺す力。つまりは、命の王センエースにふさわしい力。
7話 バグを殺す力。つまりは、命の王センエースにふさわしい力。
(……センの武に宿ったバグ……原因や理屈は不明やけど、だいたい、どういうもんかは分かった……『攻撃対象の虚理的な処理にエラーを起こす』。……正当な手順を踏んでない『バグによる強化』は、ぶっ壊されて、『ゴミ』へと堕ちる。……これは『サイコイブシステムの理不尽』に近いものがある。根源は同じか? 人間失格のワガママを助長して幇助して増長させるバグ……あえて、いいように言えば、強制的にバグを殺すバグ……この性質は、『タス』のフラグメントによるものである可能性が高いか……うん、根源はそこにありそう……やけど、あくまでも土台にすぎん気もせんではない……)
脳の高速回転がとどまるところを知らない田中さん。
(固有神化や経験値操作や時空転移の段階まで至ったワシらは、全員、バグありきで戦場に立っとる。バグなしでは、もはや、ついていけんぐらい、過剰にインフレした最前線。もはや、戦場は正常性を見失い、『バグをどう扱っていくか』という闘いになってきとるわけやけど……そんな現状にジャーマンを決め込む乾坤一擲の一手。バグを殺すバグ……えぐい毒にやばい毒をぶちまかして中和する……)
いつまでも加速し続ける頭脳。
(この世界のバグを取り除く力……命の王センエースにふさわしい力と言えなくもない……もし、『その者にとってふさわしい、なすべき力』が発現する、というのであれば、ワシに発現するのは、どういうもんやろうか……)
散々、頭を回転させて、色々と演算した末に、
田中は、
(……センがバグ取りの専門業者やとしたら、そのサポーターであるワシはデバッガってところか。直接バグの修正を行うのがセンの役目で、どうすれば最適になるかを演算してセンに教えるんがワシの仕事。効率化や最適化という細かな演算作業は、センエースが苦手としとる部分。逆に、ワシは地道にコツコツとバグ取りしていくんが嫌い。別にできんことはないけど、やりたくないし、得意でもない。センが手足でワシが頭。それが、輝く未来を紡ぐ、『可能性』の最善)
自分の中で一つの結論を出すと、
(セン、その『真醒・裏閃流』とやら、徹底的に磨いていくで。と、同時にワシはワシで、その力を学習していって、同系統の力を使えるようにする。さあ、ここから忙しくなるでぇ)
センエースを殺すための出力を上げていく。
結局のところ、殺し合うのが一番はやい。
★
――『真醒・裏閃流』は、なかなかハンパなく、田中をボコボコにすることができた。
『積み重ねてきた絶望の重さ』という点だけで言えば、田中がセンに勝てるわけがない。
その点に置いて、センは次元が違う。
この世の誰一人、影すら踏めない、最果ての領域。
田中は、ぶっちゃけた話、センにおんぶに抱っこで、ここまできている。
『センエースが必死こいて積み重ねてき土台』をド器用に拝借して、『世界に隠されていたバグ』を瀟酒に見つけ出し、優雅に振り回すことで、破格の天才としての面目を保ってきた。
――いわば、ショートカットを見つけ出す力と、ショートカットの使い方が抜群に優れている。
これほど高いところまで、これだけの狂ったような速度で辿り着いたのは確かに素晴らしい。
だが、所詮は借り物。
『完全な地力』だけで戦わなければいけない、となれば…
「ぐっ、がはっ」
ボッコボコにやられる田中。
『真醒・裏閃流』は、的確に、『田中が回収してきた、バグ技の成果』を封じていく。




