5話 歯ぁくいしばれ! そんな幼稚園児、修正してやる!
5話 歯ぁくいしばれ! そんな幼稚園児、修正してやる!
(……この感じ……回復魔法が阻害されとる……とは、またちょっと違うな。……これは……『破壊』が深すぎて、虚理での処理が間に合わんって感じか。……いや、それもあるけど、もっと根本の話……ワシの中で積み上げたバグ……の一部がぶっ壊されて、連携を失っとる。緻密に組み立てたビルドゆえ、一部でもぶっ壊されたらボロボロに瓦解する。で、今回、壊されたんは、具体的には……虚理の処理を最適化させるシステムの部分。こんなことされたら、魔法の挙動が狂って当然。バグをぶっ壊されてバグるという因果応報。……なるほど、やばいな)
(一人相撲やめろ。理解できたのなら、どういうことか、幼稚園児でも分かるように説明しやがれ。3文字で)
(虚とは、嘘や空っぽやスキマやフィクションや穴を示すが、しかし、だからこそ、『不完全性の補完』としての重要な役目を果たす。理とは、倫理と物理と整理と道理と地理、つまりは秩序の具現。具体性と抽象性の両方を併せ持つ。すなわち、虚理とは、虚と理の二つが持つ有機的かつ無機的な多次元断層の最大公約数。まとめると、本来存在しないはずの具体性。幻想の合理化。理不尽と不条理に対する推敲と追及)
(田中、お前、幼稚園児、見たことある? 今、お前が言ったことを理解できる園児が、もしいるなら、ここに連れてこい。そんなウザすぎるクソガキ、シバきまわして粛清してやるから)
(ワシからしたら、全盛期のアインシュタインも幼稚園児みたいなもんや)
(お前からすれば、偉人も園児という、その剛腕すぎる相対性理論は、ちょっと横に置いておいて、『絶対的な園児』でも分かる解説をしてくれ。かなり譲歩して、10文字までは使っていいこととするから)
(アンパンチは一撃必殺)
(完璧な解説、感謝だ)
頭の中で、無意味な討論をしている間に、
どうにか、田中の欠損は魔法で回復した。
配下たちの手前、一応、殺し合いは続けながらも、
頭の中では、田中とセンの討論が続いている。
(魔法が使えるこの世は虚理であふれとる。ただでさえ、この世界の道理はゆがめられとる。だが、これまでは、一定の『ルール(政治)』があった。あえて腐敗政治と言ってもええ。虚構の中にも『摂理』と『忖度(抜け道)』があった。『見て見ぬふり』をし続けたツケの清算とも言えるか。セン、お前のさっきの閃拳は、妙なバランスで保っとった不条理な世界に、高潔すぎる理不尽を押し付ける、いわば『屁理屈を殺す一撃』やった)
もう手の施しようがないぐらい、どうしようもなくなっている『腐敗政治』に、
『いや、それ、ダメじゃん。税金、無駄に使って、何やってんの。公文書改竄すんなよ。答弁で、ごにょごにょごまかすな。変なルールつくんな。バカなの? 死ぬの?』
と、ド直球で、はらわたをかっさばいて、膿と毒をグチャグチャにしていく。
(なあなあでごまかしてきた虚理のバグに、芯をエグる一撃を叩き込む革命)
(何一つわからんが、とにかく、俺がすごいって話だな。もっと褒めて。メンヘラを相手にするときよりも、さらに深く甘やかして)




