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2話 丁寧に磨かれていくセンエース。


 2話 丁寧に磨かれていくセンエース。


 センは田中から、『才能の違い』を見せつけられ続けた。

 センが、『置き去りにされたくない』と思う暇もなく、田中は上へ上へと駆け上がる。

 今となっては、もう、ただ、『豆粒になってしまったライバルの背中』を、『遥かなる低み』から見上げるばかりのセン。


 もちろん、田中も、途中で壁にぶつかったりしていた。

 そりゃそうだ。

 壁は誰の前にも平等に現れるものだから。

 ただ、天才は、壁の前で無闇に時間を浪費したりしない。

 壁をどう対処できるかが、天才と凡人の最も大きな違い。


 その点において、田中は世界一級の輝きを世界に魅せつけた。

 田中は、壁にぶつかっても、ササっと『壁の分析』を終わらせて、『明確な急所』を導き出すや否や、指先一つで『ちょちょいのちょい』っと容易く破壊してしまう。


 そんなことを繰り返し続けた田中の武は、いつしか、『ちょっともう、よくわからないと言わざるを得ないところ』まで行ってしまった。

 厚みの質が違う、とでも言うのだろうか、


 『今のセンでは、どうあがいても理解できない領域』まで、田中さんはたどり着いてしまったのだ。



 ――実のところ、そんな田中に対して『強い劣等感を抱き続ける』という『センの痛み』がアリア・ギアスになっている。

 『センが苦しんだ分だけ田中は磨かれて、田中が磨かれた分だけセンが苦しむ』という、夢の半永久機関が完成している状態。


 最終的に、田中は、『センエースのCPUになる覚悟』を固めている。

 要するに、田中が強くなった分だけ、最終的なセンの戦闘力も底上げされるということ。


 この事実に関しても、センは、実のところ、うっすらと理解できている。

 田中が強くなることは、実のところ、センにとってメリットしかない。

 仮に田中がセン専用のCPUにならなかったとしても、『人類の守り手が膨らんでいく』という事実は、命の王であるセンにとって大きなメリットだろう。

 多角的にも局所的にも、田中の成長は、センにとってプラス要素である。


 ――だが、理性でいくら理解を示そうとしても、『根源的な叛逆の魂』を、精神力だけで押さえ込むことはできなかった。


 もし、『人』にそんなことができるのであれば、戦争など起こるはずがない。

 人が根源的に有している『命の弱さ』を、センは、いま、まざまざと痛感している。



 ★



 ――ついに、5億回を超えた。

 年数で言えば50億年。

 サイコジョーカーを背負った上で、大事な配下数十人から憎まれ、殺気を向けられ、『世界で一番負けたくないライバル』の遠い背中を歯噛みしながら見続けて、そして殺されるという地獄を、50億年、繰り返した。

 普通の精神力では、軽く1000兆回は気が狂っていることだろう。


 だが、センエースは、この地獄と真摯に向き合い続けていた。

 意識を飛ばすことなく、重たい一秒一秒を『心身の全て』でかみしめながら、このとんでもない毎日を、丁寧に、慎重に、積み重ねてきた。


 この尋常ならざる精神力は、決して生まれつきのものではない。

 センエースの精神力が、『生まれつき、人より強固であること』は事実だが、生まれた時から、これだけ強靭なメンタルを誇っていたわけではない。

 センエースは、今日に至るまで、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、折れることなく階段を上がり続けた。

 『どれだけ辛くとも、絶対に折れてやらないと歯を食いしばって磨き抜いてきた結晶』が、器になっているから、今、センは前を向くことができている。


 その結果、


(ちょっとだけ、見えてきた……か?)


 田中との殺し合いの中で、

 センは『田中の呼吸』を掴み始めてきていた。

 それは、同時に、自分の呼吸が客観的に見えてきたということでもあった。

 殺し合いの中で共鳴していく。

 田中を深く理解していくセンエース。


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