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夏の日差しとともに

~地球 20xx年 8月14日~


ミーーン、ミーーン、みーーーーーーーーん。


夏の青空に入道雲が湧き起こり。

セミの鳴き声が空気に木霊する。



そんな夏の蜃気楼が揺らめく中、私『名前 琴音』(性別 男 30歳)は墓参りに来ている。


チーーーン。


小さい持ち運びの鐘を使い先祖に手を合わせる。


今やっと汗だくになりながら、

雑草を取り、花や食べ物を添え、

お墓を綺麗に掃除し終えたところだ。


周りには『琴音』一人しかしかいない。

家族は今忙しいので時期をずらしてくるみたいだ。

とりあえず家から近い琴音が代表して墓参りに来た。



盆まっただ中なので、人が多少いてもよさそうなものだが、

何しろ墓の立地している場所が、人里離れた場所で来る人がほとんどいない。


お墓全体の規模も「琴音家」の墓も含めて数人の墓しか点在していない、

そもそも来る人が少ないのでこれが当たり前なのだろう。



ここは人里離れた海から数百Mの高台に位置する場所だ。


辺りは林が遮り海は見えない。

腰を落として、首を傾げて、風が良い感じに吹けば

木の葉の隙間から辛うじて海を確認できる。


過去にはそんな不審な体制をしなくても悠々と見えたのかもしれない。



今は鬱蒼と茂る林の木漏れ日が熱さをしのいでくれているのでありがたい。


「よお。元気にしてたか?・・・こっちは元気だったわ。・・」



墓に向かって話かける。


数年前祖父がなくなった。

祖父には様々な恩地を貰った。

人としてのあり方や人生観、言葉では言い表せない程だ。


目を閉じれば今でも祖父と過ごした記憶と情景が目の前にあるように広がる。


「今日も暑いな・・・・ま。酒でも飲んでくれ。・・・」


そう言いながら。祖父が好きだった酒を墓にかける。



トクトクトクトクトクトク


酒が墓を伝うが熱過ぎてすぐに乾燥する。




「・・・・・・」



しばらく墓を見て思いを馳せていた。

墓と琴音だけがその場で切り取られたかのように時間を紡ぐ




そういえば私の名前は『琴音』だが女ではない。

列記とした男である。


その女らしい名前から幼少の頃はよく間違えられ、

先生のグループわけで何故か女子と同じ区別にされたり

琴音ちゃんと呼ばれたりしたが・・・今では良い思いでか。。。




やがて腰を上げると手を合わせ、

帰る準備をする。



(ご先祖様方いつも見守ってくれて本当にありがとうございます)










墓に背を向け歩き出してしばらくして夏の暑さを実感する。


ミーーン、ミーーン、みーーーーーーーーん。


じりじりと琴音の首筋を太陽が焼く。


手には「手水」やバケツを持ちながら、

背にはバックを背負って歩き続ける。


ここまでは車で来た。

帰るために駐車場へと向かう最中だ。

駐車場といっても林の中にある舗装もされてない場所のため周りは木に囲まれている

墓からはずっと変わらない林の風景が続く。




「今日はいつにも増して暑い感じがするな」


なんでも今日は太陽活動のフレアが地球史上最大に活発らしい。

地球の反対の国では今まででみたことのないオーロラが出現したとか何とか。

先ほどスマホのAHOOO!ニュースでピックアップされていた。



あまりにも暑いので墓に来る前に久しぶりに『ガキガキ君』を食べてから来た。

普段ならほとんど食べないが何となく食べたくなってしまった。

食べたのは子供の頃以来だろうか?


その何となくが功を制したのか何と人生で初めて「当たり」がでた。

『その当たり棒が今紙に包まって鞄に入っている。』


当たると何気に嬉しいもので一人で心の中でテンション爆上げしていた。



おっこれ当たりじゃん。マジかよ!?。人生で初めてガキガキ君当たったは。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーフォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。今日ついてるーーーイエーーーーイ。シャシャーーーーーーオラ。でもこれ持っていくの少し恥ずかしいけどな。・・・当たったしよしとしよう。


絶対人前では発せない言語である。

最後の方は現実に戻りながらも

心の中でにやけ発信していた。





さて、そろそろ車に着く頃だ。



住職か誰かがやったのだろう「迎え火」の後が見えた

昨日は8月13日。麻の茎を折り重ねて燃やした後がある。


(確か車を止めた場所はここから数十Mのところだったはず)


テクテクテクテク



テクテクテクテク



(あれ?。この辺に止めたはずだったんなだけどな?)


止めたと思ってはずの場所に車が見えない。


(もうちょっと先だったっけ?)


仕方が無いのでまた歩き出す


テクテクテクテク



テクテクテクテク



テクテクテクテク




テクテクテクテク





(・・・あれ?)



ちょっと焦燥感が募る。



いくら何でも到着していいはずだ。



テクテクテクテク



テクテクテクテク



ダダダ



ダダダダダ



しまいには少し走ってみたが、車の影も形も見えない。

辺りは鬱蒼とした林が続くだけだ。



道間違えたかな・・・・?



とりあえず墓まで戻ってみるしかないか・・・


ちょっと戻ってみることにする。

確か道は一本だったはずだ。分かれ道なんかあったかな?


まさか盗まれたか?

いや、盗まれたならそもそも駐車場の場所くらいはあるだろうし・・


自問自答しながら来た道を引き返す。



だが以前として林が続くだけである。


「・・・・・?」



首から嫌な汗が伝う。



「・・・・????」



少し小走りになりながら

最後はほぼ全力ダッシュで来た道を引き返す。




『墓のある場所に着かない』


『駐車場にも着かない』


どこまで進んでも林がひたすら続いている。

戻っても進んでも林しかない。




・・・・ははは。そんな馬鹿な。

だってさっき「迎え火」の後が見えてからそんなに進んでいないはず。

道も一本で脇道にそれたわけでもない。


慌てるな。落ち着け。周りを確認しながら来た道を戻るんだ。



深呼吸すると。

汗を拭って平常心を装いながらゆっくりと歩く。








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