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十一章⑥


「……っ!?」


 マリンローズにもまた、黄金に輝くパラメータが見えているのだろう。パラメータはレオンハルトたちの力強い言葉に呼応するように光を放った後、ふいに砕け散った。


 その中からすさまじい魔力が溢れ、五匹の獣を形作る。


 有翼の獅子、双子の巨狼、四翼の鷲、紅眼の竜ーーレオンハルトたちに加護を与える聖獣たちだ。


 だが、その毛並みや羽毛、鱗の色は、パラメータと同じ金の光に染まっていた。黄金の聖獣たちはアンジェリカたちの周囲をぐるりと取り巻くと、空中に床を造るかのごとく、巨大な光の魔法円を出現させる。


 天馬は迷わず。そこに降り立った。


「な、なんなのこれは……!? 〝魔王〟の封印が解けて、バッドエンドは確定してしまったんじゃなかったの!?」


 天馬が降りろ、と促すように身をかがめるので、アンジェリカはプリシラとともに双子を抱き、魔法円へと降り立った。足に伝わる感覚は硝子に似ている。天空に出現した巨大な光のステージは、まるで自分たちを〝魔王〟と対峙させるための舞台装置だ。


 高鳴る胸の鼓動が抑えられない。


 なにか、自分の理解を超えたことが起きている。


「これは一体……! なにが起きているのですか?」


 レオンハルトたちも自らの聖獣たちの変化に驚きつつも、導かれるように魔法円に立った。セオドールの竜化はいつの間にか解け、角も尾もない人間そっくりの姿になっている。おそらく、彼の聖獣が依代である魂を離れたためだろうが、慣れない姿に戸惑うセオドールに黄金の竜が近づき、愛おしげに鼻先を寄せた。他の聖獣たちも、それぞれの主に親愛を示している。


 その光景に、双子たちがあっと叫んだ。


『これは、まさか、エクストラステージ!? シリウスロッド攻略シナリオの中でも最高難易度を誇る、幻の隠しイベントだよっ!!』


『間違いありません!! 発生条件は、〝魔王復活のバッドエンド発生時に、全攻略対象の好感度が最大値に達していること〟! パワーアップした聖獣たちとともに〝魔王〟を倒せば、世界は救われてスペシャルエンディングにたどり着けます!!』

 

「か、隠しイベント!? スペシャルエンディング!?」


「隠しイベント……確かそれは、決められた条件を満たすと発生するボーナスイベントだったわね」


 冷静な声にふりむくと、すぐ後にマリンローズが立っていた。むっつりと腕を組んでいるが、つい先程まで発していた触れなば切ると言わんばかりの気迫は薄れている。


 ズレた眼鏡を右手の中指でクイ、と押しあげ、彼女は呆れたように嘆息した。


「パラメータを効率的に向上させるために、成海しずくが利用してきた〝ゲーム上のシステム〟。そんなものに、まさかこんな窮地で勝機を与えられるだなんて。……まあいいわ。勝算があるのなら、利用するだけよ」


「マリンローズ先生……! それじゃあ、わたしたちも一緒に戦っていいんですね!?」


「仕方ないわ。これだけ駄目だと言っても聞かないのだから。まったく! 揃いも揃ってどうしてこうも聞き分けが悪いのかしら、私の教え子たち(・・・・・・・)は!」


「……!」


 ツンとそっぽを向き、乱暴に言い捨てられたその言葉に、面々はそろって歓声をあげた。しかし、一つ大きな問題があると、マリンローズは厳しい顔つきになる。


「この聖獣たちの力を借りれば、きっと〝魔王〟にも対抗できるわ。でも、今の状態で〝魔王〟を倒せば、融合している成海しずくとシリウスロッドも消滅してしまう。なんとかして二人を取り戻さないと」


「そ、そうでした! 師匠ーー成海先生はシリウスロッド様を助けるために、わざと〝魔王〟と融合したんですよね。〝自己犠牲の大魔法〟を使って、彼を助けるために……、ーーっそうだ! なら、こういう手はどうでしょう!?」


 直感的に閃いた考えを、アンジェリカは夢中になって伝えた。

 

 今の状況は、まさに奇跡だ。


 自らの運命から逃げ出して、自分自身の幸福を願ってしまったアンジェリカ。


 その皺寄せをすべて引き受けてくれた成海しずくと、絶望的だった運命を何度も覆す力を与えてくれたマリンローズ。


 二人が起こしてくれた奇跡。


 ーー今度は、聖女(自分)がそれを起こす番だ。


 彼女たちの幸福のために。


「どうですか!? 魔法に関してはど素人の成海先生にもできたことなんです! この国最強の魔法士であるマリンローズ先生なら、きっとできると思うんです!!」


「……アンジェリカ。貴女はいつでも、自分が悪いと悔やんでばかりで、前に進もうとしない不出来な弟子だと思っていたけれど」


 興奮のあまり肩で息をするアンジェリカに対し、マリンローズは眼鏡のレンズを冷たく光らせた。


 しかし、その向こうに覗く双眸は、誇らしげに微笑んでいる。


「ーー成長したわね。やっと、聖女らしい顔つきになったじゃない」


「……っ! あ、ありがとうございます!!」


『それじゃあ、作戦も決まったところで! 皆さん、張り切って参りましょう!!』


『〝プリンス&プリンセス ラブ+ 〜恋からはじまる学園新生活〟ラストバトルの始まりですよ!!』

 

 双子に応じるように天馬はいななき、聖獣たちはそろって咆哮をあげる。


 それは暗雲をかき消すほどのときの声となり、澄んだ天空に響き渡った。

 

 

 

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