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三章④


「な、な、な、なんっっですか!? あの顔面偏差値チート級イケメンはっっ!?」


「改めて紹介するわ。彼こそは、私の人生初の最推し、シリウスロッド・フレースヴェルグ公爵閣下よ……っ!! 悪役令嬢シルヴィアのお兄様で、銀髪×モノクル×年上属性の宮廷魔法士長なのーーって、アンジェリカは彼のことを知らないの?」


 てっきり、新プリで追加された攻略対象だと思っていたんだけどと言うと、アンジェリカは細い腕を組んでうーんと唸った。


「わたしも、ネタバレ拒否派だったんですよね。少なくとも、わたしがプレイしたルートには登場しませんでした。でも、あの容姿でシルヴィアのお兄様なら、確実にそうだと思います! もしかしたら、ハードモードの特定ルートにしか登場しない攻略対象なのかもしれません」


「なるほど! いわゆる隠しキャラってやつね。それなら、あのパラメータの高さも納得だわ」


「パラメータ? マリンローズ先生には、相手のパラメータが見えるんですか!? ーーあっ、そうか。もともと、そういうサポートキャラクターですもんね」


 アンジェリカは考え込むように唇を閉じ、ややあって、意を決した表情で私を見た。


「マリンローズ先生。昨日は、取り乱してしまってすみませんでした。あれから、落ち着いて思い出してみたんです。十六年前に取り戻した前世の記憶ーーわたしがプレイした新プリのハードモードについて」


「ありがとう……! 私の方こそ、いきなり押しかけて、驚かせてしまってごめんなさいね。ーーそれで、なにかわかったことはあった?」


「はい。ハードモードが発生すると、どの攻略対象プリンスのルートでも、授業に出席しなくなるんです。だから、もしプリンスたちが欠席していれば、ハードモードが発生していると考えて間違いないと思います。ただ、前にも言った通り、わたしの攻略結果はバッドエンドばかりで、トゥルーエンドにたどり着けたことはないんです」


 ごめんなさい、と呟くアンジェリカの目が、涙に潤んだ。


「昨日の夜、今からでも出会いイベントを起こせないかと、学園に忍び込もうとしてみたんです。でも、フェリクスに見つかって止められてしまって。本当にごめんなさい。この世界の様子がおかしくなってるの、全部わたしのせいなのに、なにもできなくて……!」


「無理はしないで。今の貴女は身重だし、魔法だって使えないんだもの。就学権を持たないんじゃ学園には入れないし、プリンスたちと話をすることも難しいわ。大丈夫、私に任せて。なんたって、私は彼等の先生なんだから! 生徒たちの悩みに寄りそって、一緒に問題を解決することが務めだわ。できることを探して、一つずつやってみる」


「マリンローズ先生……! なら、わたしも今できることを頑張ってみます! ゲームでは、プリンスたちの心を開くためには、【好感度】をあげることが第一でしたよね? だから、フェリクスたんと一緒に【好感度】があがりやすくなるパラメータ向上補助効果のスィーツを作ります! 放課後までに仕上げておきますから、お立ち寄りくださいね」


「プリプリに出てきたスィーツが食べられるの? すごいわ、楽しみにしているわね!」


 さて、そろそろ授業が始まる時間だ。それじゃあ放課後に、と立ち去りかけた私を、アンジェリカが呼び止めた。


「言い忘れていました! どのプリンスかは思い出せないんですけど、一人だけ、バッドエンドの回避方法を知っているプリンスがいるんですよ! ハードモードを攻略しようと出会いイベントを起こさずにいたら、三年目に授業に姿を見せなくなって、学生寮の自室に引きこもったまま出てこなくなったんです。そして、夏休みの初日。彼の部屋のドアが半開きになっていることに気づいたヒロインが中を覗くと、痩せ細った彼の死体がーー」


「どんなホラーゲームなの!? 恋と魔法の乙女ゲームに、そんな凄惨なバッドエンドはいらないわよ!!」


「昔のプリプリだと、バッドエンドはヒロインとくっつかないってだけでしたもんね。それだと面白くないので、ハードモードのバッドエンドは多種多様に凄惨なんですよ。確か、このルートではプリンスの死が火種となって、国際問題の末に大戦争が勃発し、アストレイア王国は滅亡してしまうんです」


「いくらなんでもバッド過ぎる……! 回避するにはどうしたらいいの!?」


「そのプリンスが死んでしまう前に、自室から引きずり出せばいいんですよ。でも、それには問題があって……」


「問題?」


「はい。彼は自室に超高位レベルの魔法結界を張っていて、解除するには、180以上の《魔力》が必要になります。つまり、三年目の夏休みまでにこの条件を満たさなければ、バッドエンドに直行してしまうんです。ーーでも、王国随一の魔法士であるマリンローズ先生になら、きっとあの魔法結界を解くことができると思うんですよ!」


 アンジェリカの瞳が、大きな期待に輝いている。その澄んだ水色に、あるプリンスの姿が重なった。


「……なるほどね。貴女がどのプリンスのことを言っているか、わかっちゃったわ。神秘的ミステリアスな深窓の君子。強大な魔力を有する魔法大国の次期国王。そのプリンスの名前はーー」



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