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辛い×甘い=恋の味?  作者: 黒辺あゆみ
4話 餌付けしたのか、されたのか

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26/31

3 イケメン怖い

出かける先は、前回と同じエリアとなったのだか。


「大丈夫ですかね?」


薫は不安を口にした。

 なにせ例の「不良狩り」のリーダーの男子に目撃された縁起の悪い場所なので、当然一抹の不安はある。

 薫の心配に、小坂が返した答えはというと。


「むしろ、一番の不安材料がアイツだからな。逆にアイツさえ押さえておけば、他は心配ない」


だそうだ。不良というのは基本的に自分たちのテリトリーがあり、その外ではあまり活動しないらしい。理由は、他の学校の不良に絡まれるから、とのこと。


 ――なんか、野生動物みたい。


 それで言うと、小坂は一匹狼ということか。

 その点、このエリアにある学校は進学校が多く、不良人口が圧倒的に少ないのだとか。例外があの「不良狩り」というお坊ちゃん型不良である。

 ちなみにあのリーダーの彼は、薫と小坂を予備校のテストに行った帰りに偶然見かけたらしい。


 ――そう言えば、駅前に大きな予備校があるね。


「出没の心配があるのはアイツだけで、アレはシメといたからもう大丈夫だろう」


小坂が自信ありげに告げる。確かに彼以外の人に、二人で出かけたことを知られた形跡はない。

 それに、あのエリアは遊ぶのに便がいいのも確かだ。



というわけで、迎えた週末。

 そわそわウキウキしているのが美晴にもバレるが、誤魔化しながら今日まで凌いだ。

 前回同様に電車内での待ち合わせで、薫は指定された車両まで移動する。


 ――あ、いた。


 小坂は目立つ人なので、すぐに発見できた。というか、目立ち過ぎている。

 帽子で茶髪のソフトモヒカンを隠し、メガネを装着したことで、確かに一見小坂とわかり辛くなった。

 けれど、一方でイケメン度が増している。


 ――誰よ、あの人に眼鏡をかけさせたの! 私なんだけど!


 薫は自分の提案を後悔していた。

 不良アピールをしているソフトモヒカンが無くなれば、カッコよくなるのは知っていた。けれど、伊達眼鏡一つでここまで印象が変わるとは。イケメンおそるべしである。

 周囲にいる中高生の女子どころか、大人の女も小坂を気にしている。チラチラどころではなく、ガン見されている小坂は居心地が悪そうだ。イライラしている様子が、手に取るようにわかる。


 ――ヤバい、前に増して近寄り辛い!


 このまま駅に着くまで隣の車両に乗っていたくなった薫の存在に、とうとう小坂が気付く。

 バチッと目が合った、次の瞬間。


『早く隣に座りやがれ!』


ギン! とこちらを睨む目が、そう語っている気がした。この小坂の本気の視線の圧力に、薫が抵抗できるはずもなく。


「へへ、どうも、すみません通ります」


周囲の刺々しい視線を集めながら、乗客の間を縫うように進んだ薫は、ようやく小坂の隣に座る。


「遅ぇんだよ!」

「やぁ、混んでたんで、ハハハ」


小坂の文句にそう応じる薫は、自分でも言い訳が白々しいと思う。

 ところで、前回は昼食に合わせて待ち合わせだったが、今回は午前九時頃に目的の駅へ着く予定である。

 朝から出て来たのには、理由があった。本日の目的地の一つである、プラネタリウムの上映時間に合わせるためだ。

 プラネタリウムという場所を提案したのは、なんと小坂の方である。


「プラネタリウムなんて、幼稚園の時に連れて行ってもらったきりです」

「俺は小学生の頃、学校の課外授業で結構来たぞ」


なんと小坂の方が薫よりもプラネタリウム経験度が上らしい。学校付近に文化施設が充実していると、課外授業も楽しそうで羨ましい限りだ。


 ――それにしても、意外なんだけど。


 小坂からプラネタリウムという選択肢が出て来るとは、思いもしなかった。遊ぶ先にゲームセンターなどのアミューズメント施設を選びそうなのに。

 これが薫と美晴だったら、雨の日に出かける先はショッピングモールでウィンドウショッピングだとほぼ決まっている。


 ――女より男の方がロマンチストだってテレビで言ってたけど、本当なんだなぁ。


 そんな感想を抱きつつ電車に揺られること三十分。電車を降りて週末で込み合う駅の構内を脱出し、今度はバスに乗ってプラネタリウムのある科学館に向かう。



そして到着した科学館は、雨という出かけるのに向いていない悪天候にも拘わらず、客で混み合っていた。


「へぇ~、プラネタリウムって人気があるんですね」


プラネタリウムが身近でない薫は、この混みようがいまいちピンとこない。


「雨だからじゃねぇか?」


そんなことを言う小坂の説明によると、梅雨の雨続きで天気が悪いこの季節、「綺麗な夜空を体感したい」という人が多いそうで。


「なるほど、気分だけでもスカッとしたいんですね」


その気持ちは薫にもわかる。やはり梅雨時期の晴れた空は格別に気分がいいものである。

 加えて入館料が映画に比べて安く、ここは高校生までが三百円、大人が六百円。星の勉強にもなるし、雨の日のお出かけ先にはぴったりというわけだ。

 薫たちはプラネタリウムのチケットを買って、館内の自由に見学できるスペースをウロウロしながら上映時間まで待つ。同じように時間を潰す人々が、薫の視界に入るのだが。


 ――なんだかなぁ。


 プラネタリウムという場所柄、子供連れが多いのはわかっていた。

 けれど、予想外にカップルが多い。あれか、暗闇の中でムードが出るからとかいう理由だろうか。


 ――これ、美晴と来たら寂しくなるヤツかも。


 自分たちも、傍から見るとカップルに見えるのだろうか。

 そんなことを考えているうちに上映時間となり、プラネタリウムの入り口に並ぶ。

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