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プロローグ
夜の遅い時刻。
とある都市の古びたビルの裏手に、うめき声を上げながら地面に転がる集団がいる。
「ちくしょ、今ならイケると思ったのに……」
行き止まりになっている奥で一人震える、集団のリーダー格らしい男子を、彼はギロリと睨みつける。
「無駄に喧嘩売って来るんじゃねぇ、てめえらのせいで腹減ったじゃねぇか!」
そこいらに転がっているペンキの空き缶らしきものを蹴りつければ、リーダーの真横の壁に当たる。
「ひっ!」
派手な音を立てる空き缶に、リーダーがビビってへたり込む。
彼としてはこの程度でビビる奴が、喧嘩なんて売るなと言いたい。
だが得てして、集団で群れる奴らはこんなパターンが多かったりする。
たぶんこのリーダーが金を持っているから、他の奴らが集まるのだろう。
「これに懲りたら、変に突っかかるのは止めるんだな」
彼はそう言い置いて、道を塞ぐ奴を蹴ってどかしながらこの場から去るのだが。
「ああ、なんか食いてぇなぁ」
そう呟いて、夜の街へ消えて行った。