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この作品は牧田紗矢乃さん主催、第四回・文章×絵企画の投稿作品です。
この作品は、桧野 陽一さんのイラストを元に執筆しました。この場を借りて、御礼申し上げます。
桧野 陽一さん:https://10819.mitemin.net/
気づいたのかどうなのか。
私は分からないままに目が覚めた。
周りは色がない世界。
右、左、上、下、そのすべてがあいまいなままだ。
「夢なの?」
私がつぶやくと、音はたわんで聞こえた。
遮る壁はないが、遮る意識はあるようだ。
意識の中で、私は流れていく。
上を見ると、それは月、あるいは太陽。
もしかしたら両方なのかもしれない。
どちらでもないソレが浮かんでいた。
「あなたは誰?」
どうせ答えない、浮かんでいる私は、夢と現実の間の世界にいるようだ。
ただただ浮かんでいるのが分かる。
どちらの世界にも属さない私は、実にあいまいな存在だ。
死んでも、生きてもいないような気がする。
どうなってもいいや、と思うと、少し体が軽くなったような気がした。
眼を少しずつ閉じ、そして意識は世界を拒絶した。