9話 待ち構えるもの②
お美和に連れられ、さくらが部屋を出ようとした時…
『鎗手さんちょっといいかい?』
イカつめのがたいがいい男性が部屋に入ってきた。
『銀さんどうしたんだい?』
『奴女郎を連れてきたんだが…』
『あぁ、昨日言っていたやつだね。中に入れとくれ。』
ツネに促され、銀が連れて入ってきたのは数人の女性。
パッと見はほとんどが20代くらいだろうか?
だが、見た目はボロボロの着物に、薄汚れた身なり。
つい、ジーッと見つめていると。
その中の1人に、周りに比べると少し幼い15歳くらいだろうか?
その子とふいに目が合い、キッと睨みつけられドキリとした。
『さくらちゃん何してるの?行くわよ!』
『は、はい!』
慌てて、さくらはお美和を追いかけていった。
廊下を歩きながら、お美和にさくらは疑問をぶつけていた。
『ねぇ。お美和さん一つ聞いてもいいですか?』
『何?さくらちゃん?』
『先程の男性が連れてきていた女性達は誰なんですか?
確か奴女郎と呼ばれていたと思うんですが…。』
『あぁ、あの人達はね。
岡場所で取り締まられてセリにかけられここに来た人達よ。』
『岡場所?』
『さくらちゃんは何も知らないんだものね。』
それからお美和はわかりやすく、さくらに説明してくれた。
遊女にも、色々種類があること。
吉原で働く者達は、いわゆる幕府公認のお墨付きをもらっている人達。
岡場所で働く者達は、幕府非公認。
つまり、非合法の遊女で色を売っている者達。
取り締まり対象なので、摘発されセリにかけられ、吉原に売り渡される。
彼女達は奴女郎と呼ばれ、吉原の遊女の中でも軽蔑されている存在であること。
『だから、さくらちゃんもあの人達に関わってはダメよ。』
『…は、はい…』
さくらは少しだけ、腑に落ちない部分を感じつつ、返事をした。