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吉原のさくら  作者:
6/13

6話 仲直り①

部屋に戻る途中の廊下で、さくらは『はぁ〜』と大きめの溜息をついた。

そんなさくらの様子を見て、お美和がクスリと笑った。

『さくらちゃん緊張がやっと解けたみたいね。』

『はい。緊張しすぎて、口から心臓が飛び出るかと思いました笑。』

『さくらちゃん大げさね。でも、大丈夫よ。

さくらちゃんが付くのは太夫の桜木さんですもの。

きっと何も心配することはないわ。』とニッコリ笑って言ってくれた。


『ただいま』と言って大部屋の扉を開けると、ちょうどお滝とヨネがお饅頭を食べていたところだったようで、お滝がさくらの姿を見てびっくりしたのか大きくむせてしまう。


『ちょっと大丈夫?お滝?ヨネお水を持ってきてちょうだい。』

『わかりました。』


ヨネはお美和に言われて、湯のみにお水を1杯持ってきて、『はい。お滝』と言って差し出した。



お滝は湯のみを受け取ると、ゴクゴクと喉を鳴らすように水を飲む。

飲み終えるとやっと喉の詰まりがとれ、落ち着いた様子だ。

『大丈夫?』

心配そうにお美和がらお滝の顔を覗き込む。


『は、はい。もう大丈夫です。

ご心配おかけしました。』と言って軽く頭を下げる。


『大丈夫なら良かったわ。』とニッコリ笑ってお美和は言う。

『お美和さんやさくらに食べられたくなくて、一気に口に詰め込んだんじゃないの笑?』

いたずらっ子のように、ヨネがお滝にチャチャを入れる。


『なっ!!』と言ってお滝が反論をして喧嘩をしかいように、お美和が会話に割って入る。


『それはヨネの方なんじゃない?ヨネの皿の上のお饅頭もうないじゃない笑?』

『ひ、ひどくないですか?お美和さん泣』

『ウソよ笑』

そんな会話で、部屋の中は一瞬で笑顔になる。

お美和さんはすごいなと、さくらは心の中で思った。


『そんなことはさておき、お滝は落ち着いたようで良かったわ。』

お美和はお滝の方に向き直り、安堵の笑みを浮かべる。


『先程はご迷惑をおかけしてしまって、すいませんでした。』

『謝る相手が違うんじゃない?これから一緒に生活していくんだから、きちんとしないとね。』


そう言われてお滝は、さくらの方に向き直る。

お滝の緊張がさくらに伝わり、さくらも緊張してくる。


『さっきは八つ当たりしてしまって、ごめんなさい!』と深く頭を下げた。


フワッとさくらは微笑み。

『頭を上げてください。私は気にしてませんから』と言った。

そのさくらの笑顔に、お滝は釣られるように自然と笑顔になる。

それが、初めてお滝の笑顔を見た瞬間だった。


すると、隣にいたヨネが『勿体無いなさくら。私ならもっと謝れって謝らせるのに笑』なんて茶目っ気たっぷりに言うと…。

さっきまで可愛らしい笑顔を浮かべていたお滝が、キッと鋭い目つきでヨネを睨みつけ。


今にも喧嘩が始まりそうな雰囲気に。


パンと一つ手を叩いて、その場の視線を自分に集めたお美和。

『せっかく仲直りをお滝とさくらがしたのに、ヨネが喧嘩を吹っかけたりしたら元も子もないじゃない…』と溜息まじりに言った。


『ごめんなさーい。』と舌を出しながらヨネが謝った。

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