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06:「ガラスの扉」

作者: 郡山リオ

私が初めておつかいをしたときを思い出したのは、女の子がガラスのドアから入ってきたときだった。私がちょうど、レジにいる時、お財布を手に持って、女の子はポケットの中からメモを取り出し、じっと文字を見てから商品を手に取る。レジまで来ると少し離れていた私を呼び止め、「すいません」。

私が、はいと振りかえると、これをくださいと、手に持ってレジ台の上へ置いた。

はじめてのおつかいなのだろうか、こわばった表情から緊張と不安が伝わってくる。

微笑ましく思った。あの時の気持ちは、今でも思い出せる。家を出るとき、お財布を落とさないか、買うものが分からなくならないか、心配であり不安でもあった。

手に持つお財布を、ぎゅっと握った女の子と私の目が合う。私はにこっと笑う。そして緊張している女の子に向かって口を開いた。

「はい、どうぞ」

袋に入れた商品を丁寧に女の子に渡した時、女の子は安心したのか笑顔になった。

「ありがとう」

女の子の言葉に私もお礼を返し、続ける。

「またのお越しをお待ちしております。」

あの時、私が言われた言葉だ。そして、頭を軽く下げて、見上げた時、昔の私がそこにいた。出入り口のマットで女の子は立ち止まる。なぜだろう、この先を私は知っている。自動ドアが開く、女の子は振り返える。笑顔でうんと頷き、小さく手を振って、走り去ってしまう。ドアの閉まった向こう側は、木漏れ日に揺れている。お店の前のまぶしい道を通り過ぎていく人の波。風は止まっている。私は、ただ息を飲んで、立ち止まり、顔を背ける。向こう側に消えた昔の私から、今の私は目を反らしていた。


おまけ的あとがき「気が向いたら書きます! しばしお待ちを!」

ふと思い出す景色は、いつも綺麗で、懐かしく、そしてほろ苦い。

買い物に来た女の子を通して見える、昔の自分。あの時の私が今の自分を見たら、どう思うのだろうか……。といったたぐいの話を書こうと思います。

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