第四話
「やあ。チェイス、ロゼ、エヴァン、ノア。それと……そこのお嬢さん達は?」
「彼女はローズクォーツ辺境伯の一人娘、アリアだ。彼は彼女のお付きのシャロン・アメシスト」
「ああ、君が」
君が、って私の何をご存知なんでしょう? 殿下。
これまで領地が王都から遠いことと年齢的なことで他の貴族に身内以外で会ったことないのですけれど。
もしやその身内が情報源? 一体全体、私は社交界でなんて思われてるの?
「宜しく、アリア嬢」
「よ、宜しくお願いしますわ」
にっこりと微笑み、握手を求める王子に促されるまま手を握る。
その後短い世間話をしてライアン王子は姦しい一団に戻って行った。
す、凄い……。あの集団に躊躇いもなく飛び込んで行った……。
「さてと。行こうか、アリア、シャロン」
「え? え⁉︎ あの、ルミリオ様やライアン王子は宜しいので⁉︎」
「ルミリオにはリアンが付いてるし、ライアン王子にもルイスとギャレットが付いている。問題無い」
「そー、そー。つーわけで二名様ご案なーい」
「何処へですか? あまりアリアお嬢様を連れ回さないて頂きたいのですが」
「シャロン……」
私の手を握っていたエヴァンの手を叩き落とし、四人から遠ざけるべく、シャロンが私の体を引く。
「あー、悪かったよ。ただ、ここは早めに離れた方が良いぜ?」
「誘っておいて離れた方がいい、とはどういう意味ですか」
「さっきのは選別だったんだ。ルミリオに群がっていたのは不合格の連中。アリアは合格だ」
「……何故選別を? そしてどのような理由で私達は合格になったのですか?」
「俺達は侯爵家跡取りに第二王子だからな。お近づきになりたい令嬢は多いんだ。だから、先にめぼしい女子をお茶会に誘って俺やチェイスで振り分けてたわけ。アリアはロゼを睨まないし、俺達の冒険者の話に凄く食いついて来ただろ? それも、将来自分が冒険者になること前提の話の食いつき方で」
「……」
「普通の女子はそもそも冒険なんて野蛮だと言ったり、俺達なら強い冒険者になれると煽てたりでそんな話の乗り方はしない。……アリア、シャロン。中等学園に進んだら俺達と冒険者にならないか?」
「……何故、侯爵家跡取りである貴方方が冒険者に?」
「その質問をローズクォーツ家の一人娘である貴女がするのか?」
「………………お断り、致しますわ」
「アリア?」
伯爵令嬢として彼等との関わりは皆無とはいかないだろう。
でも、それ以外では関わる気は無い。
今回のお茶会だって貴族の社交辞令として出席したのだ。
彼等攻略対象及びライバル達とプライベートで関わる気は全くなく、ましてや冒険者仲間など以ての外だ。
幼馴染で乳飲み兄妹で、お付きのシャロンについてはもう諦めているが、逆に言えば彼だけで精一杯で他の連中とまで付き合う余裕が無い。
彼等を見ていると、ゲームのスチルがチラつく。
彼等と過ごしているとゲームの設定と比べてしまう。
私は目の前の、リアルの彼等を前世というフィルター無しではみられない。
それがどうしようもなく申し訳なくて、だから、彼等とは付き合えない。
でもそんなことをエヴァン達に言うわけにはいかないので、適当な理由を言って私は誤魔化す。
「貴方方と一緒にいたら、他の令嬢から睨まれてしまいますわ。折角のお誘いですけど、力不足でもありますし、お断りします」
そう言って、振り向かずに私は庭園を去った。
乙ゲー転成ものってよく考えたら結構怖いというか気持ち悪い面有りますよね。攻略対象達って転成者に自分のプライベートただ漏れなんですよ。人に知られたく無い弱みまでもろもろ。アリアはそこに結構罪悪感を持ってる……そんなキャラを表現出来てると良いなあ、と思います。