#6 リアルなRPGコマンド
カパーー……
「……なんか気色の悪ィ色してんのなぁ」
入江が、瓶の蓋を開けてぼやいた。
でも、これがなんとなく塗り薬っぽいと野生の勘でそう思った。
「あ。五十嵐チーフ~~」
にやける入江に、
「--後で、蹴とばしてやるから覚えておけよ? 出口~~」
五十嵐も入江に身体を預けた。
いきなり、訳分からないものを小林を、被験者にするわけにもいかない。
そこは、入江が自分を指名したことを評価した。
(だが、殴る)
ヌリヌリ。
効果は凄かった。
「こいつを学会とか、小難しいとこに発表すりゃあ大金持ちになるこたァ、間違いねぇなァ‼」
入江の目が輝き、瓶を高く持ち上げた。
ひょい。
「ったく。子供なんだから、出口は」
「19は子供なんだよ! チーフ~~」
「じゃあ、もちろん。煙草は二十歳になってからな」
「--……それはそれだよ! っほら! っな?!」
「全く、これだからお子様は困るんだわー」
「その子供に助けられたんだろぅが! ったくよ~~ッ、恩にきろよなッ」
入江は腕を組み、顔を横に動かした。
ボカ!
「ってェ~~‼」
振り返ると、五十嵐の顔があった。
そして、にこやかに入江の頭を撫でていた。
「感謝はしてやる。恰好よかったぜ! 出口にしてはな」
しかし。
ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
五十嵐に腹から蹴り飛ばされてしまう。
「ひでぶっっ‼」
ズザァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ‼
「! ぅあちゃ、あちゃちゃあ~~~ッッ‼」
慌てて入江も起き上がる。
とてもこの砂は熱い。
きっと、足の裏がの皮膚も焼けているだろう。
あの瓶のクリームを塗ったところで、歩くたびに塗る羽目になるのは目に見えている。
だから、ここは我慢だ。
テンションが可笑しい入江を横目に、
「小林サン。今、直しますよ」
五十嵐は、小林の傷にクリームを塗った。
◆
「はぁ?? 何を言ってんの?」
小林が怪訝に声を上げた。
それは、この入江の台詞だ。
『あんとき、あの標識のボタンや色のことをなんで指示出来たんだよ』
記憶にない。
ないものを聞かれてもーー馬鹿なのかな?
いや、馬鹿か。
小林は内心、そう思った。
「あ! チーフ、あの瓶くれよ! 俺が苦労して手に入れた、初めてのアイテムなんだからなッッ‼」
「…………仕方ないな」
渋々、五十嵐も手渡す。
「あ。あの標識の枯れたとこに、なァんかねェ~~かなぁ~~っと!」
RPGの冒険者たちのように、入江が探す。
進む。
戻る。
⇒探す。
このコマンド、状態だ。
「ねェ~~なぁ~~。っち! ん? 何だぁ~~こいつあぁ~~」
朽ちた標識の後に、三つの種があった。