#5 偶然の勝者
誰かの気まぐれなのか。
それともーー何なのか。
入江は考えてしまう。
◆
「だーかーらーよー~~~! これをどうすんのかって説明ぐらいよこっせっての‼」
それからのブチ切れ。
パシン!
トシン‼
ブチ切れても、入江は鋼硬尾を攻撃を払っていく。
「っく! これが、何なんか分りゃあなァ‼」
苦々しく、入江も言い捨てる。
じわ、じわーー……
足の裏が、堪らなく熱い。
「っチ!」
そんな砂の上で伸びている二人は、その非でない熱を全身で。
「……虹、いろーーボタンを……虹色のボタンをーー」
後ろから、いや、うわ言のように小林が言った。
「はァ?! ぬァんだってぇ~~??」
「あ、アイテムの……ボターー」
がくり。
小林が落ちてしまう。
「『アイテムは虹色のボタン』?? ったくよ~~っしゃ、っなろぉ~~‼」
半信半疑だったが、入江も小林に賭けることにした。
「当たったら、マンガ喫茶六時間奢ってやんよ! 小林主任‼」
◆
「ん゛ん゛??」
クラレントも目を伺った。
「な、何をするつもりじゃな?? あの男は!?」
細い目が真ん丸になった。
「さぁ。でも、《【標識調】》の使い方が分かったっぽいよね」
クラリスは平静、そのものだった。
「~~~~~~っつ! だから、アタシはまだときではないと言ったのじゃ!」
クラレントの口が大きく開かれて、声を荒げた。
「つまらぬ! つまらぬ‼」
「クラレント。少し、落ち着いてくれないかな?」
威圧感のある声を発し、クラレントを黙らせる。
(何故? どうしてーーあぁ、そぅか……)
クラリスが嘲笑う。
◆
ペポーーン!
虹色の看板のボタンを押した。
勿論、依然として鋼硬尾の攻撃は受けているし、段々と、その攻撃も弾けきれない。手が痛い。
「出でよ! 便利な道具よっっ‼」
ボトーー……
「?? 瓶????」
ゴロロン……--
「も、桃???????????」
唖然とする入江を他所に、標識が朽ちていく。
「のぁ!? 嘘だろぉう???」
ダラダラ。
汗が止まらない。
「っくそったれが‼」
そう言い捨てると、入江は桃を持ち上げた。
桃はゆうに、20個はある、が。
「足りるわけねぇ~~~~~~だろぉがよぉ~~~~~~~~う‼」
シャーーーーーーーーーーーーーーーク!
攻撃を仕掛けてきた鋼硬尾に、桃を投げつけた。
すると、桃は分裂したかと思えば、大きく爆音を立てて散った。
桃色の煙が吹き荒れ、煙が晴れていくと萎んだ姿があった。
キュピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン‼
「キタ、これ~~~~~~~~~~~~~~~~~‼」
入江は周りにいる鋼硬尾に投げつけーー殲滅させていた。
「一丁上がりだっつ~~の‼ いぇいっ」
そして、改めて小林と五十嵐を見た。
死んでいるのではないかと思うほどに、出血があり、ぴくりとも動かない。
「なー死んだんか?? な~~おいっての」
入江が、小林を粗野に、肩を蹴とばした。
ガシ!
「ぅお!?」
「勝手に! 殺すんじゃねぇよ‼ お前は!」
掴んだのは五十嵐だった。
「っつぅ~~か! 命の恩人を蹴とばすんじゃあーーねぇよッッ!」
ギリギリ。
「ぁたたたたたたたたたたあた! 痛い! 五十嵐チーフ、痛いってば~~‼」
尻もちをついてしまった入江の目に、もう一つあった道具の瓶が映った。
「あ。ありゃあ、ひょっとすると、ひょっとすっかも!」
五十嵐の手を払い、入江は瓶へと手を伸ばした。
そう。
それは医療品の瓶である。