#3 緊急事態へ
三人は砂漠を、歩くことにした。
ただ、どんなに見渡しても。
一面ーー青い砂の山。
匂いも漂う、どころではない。
◆
「何だよ! ちくしょうッッ‼」
入江は砂を蹴飛ばす。
足は靴下だけだった。
堪らなく、足の裏が熱い。
「あっち~~ィーー‼」
少し、曇っているとはいえ、気温も高い。
乾燥もしている。
確かに、ここはSFの世界。
だがーーここも現実だ。
「一々と煩いですよ。入江君」
冷静に突き飛ばす言い方をする。
「! アンタなーーッッ」
ぶッッ、しゅぅ~~!
「だから。アンタは止めなさい、ての」
「目が! 目がぁ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ‼」
五十嵐が目つぶしをした。
◆
「五十嵐チーフ~~ひでェーーよ~~ぉう~~~~……」
入江が目を抑える。
「ははは。だって、入江ちゃんが悪いでしょ」
ム。
「小林サンに敵意持つのもおやめなさいっての。大人気ない」
ムムムム!
入江は頬を膨らませた。
「別に気にしてないし」
小林が、そう吐き捨てる。
「ほら! 本人だってこう言ってっし!」
ばっこーーん!
「言い訳あるか! この禿が‼」
「だから! 禿じゃないっ‼ ちょっと、おでこの髪を上にやっているだーーけ……」
入江の言葉が止まる。
その様子に、小林が声をかけた。
「どうしたの。君が黙ると気味が悪いんですが」
入江が小林の上段にあるロッカーを指差した。
「--光、ってんだけど」
確かに。
まだ、開けていないロッカー。
その中から光が漏れている。
冷たいお茶をを持ったまま、小林はロッカーに鍵を差し込みーーガチャリ。
思わず、五十嵐が待ったをかけた。
「ね~小林サン?」
五十嵐も体格はよく、色白でプレイボーイといった存在でもある。
しかし、21歳と若くして既婚者だ。
嫁は銀河高校の二年生。
両目の下に泣きほくろがあるのかチャームポイント。
などと、本人がよく酒の席でそう言っている。
「ーー開けるんなら、賭けません?」
「何なの、急に」
突拍子もない五十嵐の提案に、小林が苦笑いする。
(コイツでも笑うんか)
入江は珍しいものを見てしまったと、身震いをさせた。
五十嵐も続ける。
「結構、アニメとか映画や小説であるじゃないっスかぁーー」
「君、オタクだもんね」
「いやいや。小林サンほどじゃないっスって」
「はぁ?? 何を言ってんの???」
「あーだって、ほらぁ~~……」
このやり取りが始まると、五分以上かかってしまう。
間に、口を挟むのも嫌だったが。
渋々。
「漫才止めてくんねェかな、大人気ない!」
五十嵐と小林が互いを見つめ、っふ! と笑うと。
二人は、入江の胸ぐらを掴み、壁に押しつけた。
ドン!
「んな真似したって、俺ァ、巻き込まれんのは御免スわ!」
っぱ。
掴んでいた胸ぐらを離した。
「--実際。怪しいな~~とか、胡散臭いな~~とか、俺のアンテナがびんびんなんスよ」
飛び跳ねていた茶色い猫毛を掴んだ。
「僕のロッカーて、何も入っていないんですよね」
入江が飛び上がり、
「おいおい! 開けんな‼ 絶対、なんかヤバイだろう~~~が!」
ロッカーに指を振った。
また、二人はーーっふ! と笑い。
ドッコーーーーン‼
入江を蹴とばした。
二人で。
因みに、いつもより攻撃はソフトな方だ。
(そろそろ、訴えてやっからな‼ このOBコンビが~~~ッッ)
「で。何を賭けるの?」
「あぁ……マンガ喫茶六時間分のお金とか」
「! いいでしょう」
ウキウキ とし始める。
「いやいや! 可笑しいからな?? 手前ら‼」
そんな入江の抗議も虚しく、ロッカーは開けられた。
◆
そしてーー今の現状へとなるのだ。
「だから! 言ったべや‼ ったく! なのにアンタらときたら、俺の言うことも聞かねェーーで、このざまかよ‼」
ドッカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぁ!?
入江の身体が前のめりに、倒れ込まされた。
口の中に、大量の砂が入った。
「?? 冷たい……うめェーー‼」
口に入ったものを飲み込み。
「そうじゃねェべ?? なんで、どかどか蹴飛ばしやがーー……」
目の前に、鮫に似た何か、獰猛な牙をもつ何かが、数匹浮いていた。
「あんだよ、あれはーー……」