ロッキー - 1 -
バイトの休憩時間、智は最初にるかにメールをした。
「明日寒いみたいだから、風邪引くなよ。実家はどう?俺も行きたかったな」
遠い思い出から感傷に浸っていた智は、優しさを誰かに振りまきたい衝動に駆られていた。
「ともみんさん、お返事もらえて嬉しいです。おっぱい、言うのは恥ずかしいですが、好きです。でも、実は僕、彼女がいたことないんです。ともみんさんは今は彼氏さんとかいるのでしょうか?」
知らない間に、ロッキーは自分のプロフィール写真を設定していた。珈琲カップを片手に静かに微笑む眼鏡の男性。細身で髪は短く、口下手そうな雰囲気と、女子から冴えないと思われそうな様子が顔から伝わってくる、「仮面」ではなく、いかにも本人の写真だった。
感傷的になっている智にとって、ロッキーのプロフィールとメールは、ひとりの同じ男性として哀れに思えてならなかった。元来エロサイトであるのにも関わらず、おっぱいを好きとは言いつつも野獣たちのようにエロに突っ走るわけでもなく、不器用に年下の女子を誘うー群れからはぐれた小鹿のような彼は、智の心を無性に痛ませた。
「わたしは2ヶ月前に元カレと別れてからずっとひとりだよ。浮気されて、しかもフラれたの。ショック。でも、ロッキーさんにおっぱいの写メ喜んでもらえたみたいだから、ちょっぴり嬉しい!また送っちゃうよ♡」
夜、バイトが終わって、家に着くと、またロッキーからのメールが届いていた。
「ともみんさん、仕事終わって今帰宅しました。仕事の休憩にこっそりともみんさんのメールと写メ見たんだけど、おかげで嬉しくなって元気出て、がんばれました!ありがとう。ともみん、フラれちゃったんだね。僕でよかったら話聞きますよ。ともみんさんも学校終わったかな?またメールしてくれると嬉しいです」