回想
「ロッキーさん、はじめまして!投稿見てくれたみたいでありがとう!!ロッキーさんはわたしのおっぱい好きなの♡?彼女さんとかはいらっしゃらないんですか?」
智は出かけた。公園の横を通った時、派手な格好の若い女がベンチに座っている初老の男に駆け寄ってくるのが見えた。嬉しそうな女の笑みは、下心を心の奥にしまい込んでいるようで、男の横顔からは逆に下心しか感じられなかった。
昼間から肩を抱き寄せる高校生のカップル。ナンパを待つ地味めな女。コトが済んで、ぎこちなく手を振りあう即席の男女。
智の住む街は、アパートの賃料の安さと引きかえに、店とホテルと情事に溢れかえっていた。
街の雰囲気を少しでも良くしようと、何年か前の市議会議員が急に作った並木の道を歩きながら、智は昔、自分がネット上で浮気をした時のことを思い出していた。
彼は、奥手だった。しかし奥手の割に、人当たりが柔らかくマメだったからか、粘着質で精神が弱めの女が彼の周りにはたくさんいた。
前の彼女もその前の彼女も、ほぼ女の方から寄ってきて、流れで付き合っていたが、その両方ともが鬱っぽく、嫉妬深く、くっつき虫だった。
今の彼女、るかはそんな風ではなく、実際周りから見ても自立している女性といったところだったが、あの時智は、かよわくて、ひとりで何もできないような女、そう元カノたちのような女との関わりを欲していたのかもしれない。