半月の宵
家に帰った瞬間、智は布団に倒れこんだ。
彼が次に起きたのは、再び新聞配達員が警音器を鳴らしてやってくる頃だった。
「ヤバ。スーパー買い物行くとかるかに言ったのに、もうこんな時間かよ。まあでも今なら少し安売りしてるか?」
自転車を飛ばして、智はスーパーに向かった。赤い空に、朝にはなかった小さな雲が幾つか見えた。
「ハヤシライスが食べたいだと?作っておけだと?仕方ないなぁ」
るかに尻に敷かれているのは、意外と嫌ではなかった。普段尻に敷かれてあげてる分、大事な時は彼女も色々協力してくれるし、彼女の笑顔がやはり智の原動力でもあった。
「やべ、調子乗って買いすぎた。重っ」
荷台にレジ袋を詰め込むと、智は自転車には乗らず、手で押して来た道を戻った。得意げに補助輪付きの自転車に乗る女児に手を振って、智はまた空を見上げた。
西の空に半月、いわゆる上弦の月がうっすら見えた。やがて飛行機が横切り、月の上に白い雲の跡を残していった。
「やっぱり、俺は女にはなれねぇわ」
携帯が鳴った。メールの着信音だった。
新着メールは、サイトからのものだった。
メールの送り主は、ロッキーだった。




