表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

澄清の暁



寝付けないまま空が明るくなっていくのが感じられた。


智は着込んで外に出た。


土曜の朝。


長らく吸わなかった煙草に興味が出て、吸ったことのない煙草を買って、公園でふかしてみた。


思いのほか、それは不味かった。


鳥達がまだ暗く、星の見える空の中を、太陽に向かって飛んでいくのが見えた。


葉が落ち切った木々の上に休んでいた鳥達も、やがて皆おなじように東に向かって飛んでいった。


るかにメールをした。


「今日休みだからさ、スーパーに買い出しくらいは行こうと思うんだけど、希望があったら教えてくれる?その結婚式はどうだった?あれ?まだ今日これからとか?」


あまりに多くメールを送り、演じ疲れたせいか、ともみんという「姿かたちのない空っぽの女」から離れたい自分と、マメで優しくて、しかも性に寛容な「理想的な女性」から離れたくない自分がいた。


男だったものが、性同一性障害やその他の事情で女性になることを決意し、姿かたちをどこまで変えたかは別として、男心をわかったまま女になると、男性にとっての理想的な女性になれる。智は、そんな話を聞いたことがあった。


智は、女に見えるような外見はなにひとつ持っていなかったが、ここ数日で、一本筋の通った揺るぎない女の人格を形成していた。


自転車をこぐ新聞配達員も、ランニングする中年男性も、コーヒーを買いに出てきた青年も、公園で背中を丸めて眠るホームレスも、いつも何とも思わないオトコ達に、なにか女性として、彼らが笑顔になりそうなこと、なにか優しさをかけてあげたい気がしてならなかった。


智は少し考えてから、ホームレスが眠る段ボールの家の前に置かれた紙コップに、小銭を何枚か入れて、公園をあとにした。


それくらいしかできない自分が、少し歯痒かった。


その時、空はもう青く、星たちは消えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ