謎の教室で
「世界とはなにか、そんな問答は歴史上いくつもの解釈と考察が行われたが終ぞ答えは出ていない。
そもそも答えを出す以前の問題だからだ。
世界とは偶然の産物であり、シャボン玉の中に生まれたシャボン玉のような存在であるということだ。
わかるように説明をするならば『知能を持った生物が創り出した娯楽』、ありていに言ってしまえば小説だのゲームだのがそれに含まれる。
あれらの世界は創られると同時に違う次元に存在するようになる。
いつ、ではなくなぜ、もない。
世界とは想像されることで創造されるものだ。
物語が生まれた瞬間世界も生まれる」
男の声が学校の教室に響き渡る。
おかしい、その場に居合わせた全員が同様の感情を抱いていた。
「さて、な前置きが長くなったな。
改めて挨拶をさせていただこう、自殺者諸君。
私はマドニア、君たちにとっては神様に等しい存在だ」
教室にいた者たちがピクリと反応する。
そう、そこにいたのは全員が自殺、もしくはそれに準ずる死に方をした。
だがこの状況は、絶対に助からないであろう死に方を者、生き残っても後遺症が出たであろうもの、傷痕が残ったであろうものと様々だが全員が傷一つない健康そうな姿を見せている。
「君たちの肉体はすでに消滅していたからね。
あぁ勘違いしてほしくはないんだけど、こちらが手を出したわけではなく火葬されたって話ね。
中には土葬の人もいるだろうけれどそこは無視してほしいね。
さて、そろそろ本題だ。
君たちは輪廻の輪から長らくはずれていたんだ、弱者を転生させてもすぐに死んでただろうからね。
ただそれじゃもったいないと思って僕が拾い上げた。
僕たちの暮らす世界ってのはいわば世界の管理者なんだけど最近無断で転生だのトリップだのをさせる人が増えててね。
君達にはそのれらの世界の浄化を命じるつもりだ。
拒否権はあるけど輪廻に認められるまで悠久の時間をさまようことになるけどそれでもいいなら目の前のスイッチを押してね」
男の声がそう言った瞬間、最前列にいた男が力強くスイッチを押した。
それはクイズ番組に使われるような赤く丸いものだったが、男の力が強かったのかひびが入っている。
「即断即決、素晴らしいね」
男の声とともにスイッチを押した男が姿を消した。
後には何も残っていない。
「それで、他にだれか今の彼と同意見の人はいるかな。
彼には伝えていなかったけれど、五億年じゃすまないほどの時間だからよく考えて行動してね」
その言葉を聞いてなおスイッチを押そうとする者は現れなかった。