エピローグ
エピローグ
始業式の朝、校門の前で新聞部の三人がせっせと『週刊草高』の増刊号を配っている。
俺は神崎からそれを一部受け取り、歩きながらそれを開いた。すると一面一杯に自殺の件について書かれている。
『まずは謝罪させていただきます。今回の自殺の調査をしていると、社会の黒い部分が見えてきて、こちらに関してはちょっとした規制などがかかったため読者にお伝えできない。それが残念でしかなく思い、このことをお詫び申し上げます』
これは恐らく、辞めさせられた教師や生徒の件だろう。
『信じ難い話だが、今回の自殺には目に見えない者の力が関与していた。それを教えてくれたのは、日馬神社の神主である鏑木正臣氏だ。彼の話では自殺した生徒の中には、人を自殺に追い込む悪霊が取り憑いていて、日馬市で起きる自殺者のほとんどがこれの被害者だという。彼もこれの調査をしていて、今回の一件で次に取り憑かれた人を我々報道部とともに探し出し、これを鏑木正臣氏が持つ素戔嗚尊という神の力によって除霊した』
大分脚色されているが、事実とほとんど変わりない。そしてこの話を信じる生徒などほとんどいないだろう。それが一番だ。誰もが事実を知り、しかしすぐに忘れ去る。
そうしてすべてはなかったことになる。
これからもきっと、同じようなことが続く。そして同じように皆が事実に気付き、忘れていく。
そう思いながら、次のページを見る。読者コーナーや早乙女と相沢による学校七不思議体験談、新聞部顧問からのお知らせなど、とりあえずすべて目を通してみる。
自分の席に着いたころには最後のページを見ていて、そこには新聞部部長手記が書かれていた。
『今回はたくさんの人に迷惑をかけてしまいました。それがとても情けなくて、悔しかった。けれどそんなときは思い切り泣いていいと言ってくれる人がいてくれて、とても助かりました。
彼のおかげで、今回の増刊号の発行も問題なく行うことができました。彼には感謝の気持ちで胸がいっぱいです。
本当にありがとうございました。もしまた、私たち新聞部が困っているときは、助けてくださいね』
俺は最後の文を見て、軽く噴き出しそうになった。まさかこんな形でお願いされるとは思ってもみなかった。しかも私ではなく、私たち新聞部、というのだから困ったものだ。本来俺は、彼女さえも護れればそれでいいのだ。
だが彼女はそれが嫌なのだろう。自分だけでなく、自分の周りも見て欲しい。彼女らしいと思う。
そして彼女がそういうのであれば、俺はその想いに応えなければならない。
まだ始業ベルの鳴らない教室から、外でせっせと動き回る神崎を見て、頑張れ、と呟いた。
これにて夢魔編完結です!
しばらく空けていてすいませんでした。その代わりというわけではないですが、一気に完結まで持ってきました。
ですが、「二人の誓い」はまだ続きます。
次回のキーワードは三貴神と百の手、です。
ではまたお会いしましょう。




