綺麗な染まり方
「どうしてバットエンドな話ばかり書くの?」
相変わらず唐突な彼女からの質問。ここは俺の部屋。
「急に何だよ?」
彼女は俺のベッドを独占して寝転びながら言った。
「たまにはハッピーエンドも書いてみたら?」
「思い付いたらね」
彼女は無表情でンビニで買ってきた雑誌に再び目を戻す。この雨の中彼女のわがままでコンビにまでいったのだ。
「じゃぁ、どこで思い付くの?」
興味なさそうに聞いてくる割りには質問が多いな。
「そうだなー、電車とか車かな、あと授業中とか」
「この、部屋はないの?」
書くのは、部屋だけど考えるのは違うな・・・。
「ここまで来たら考えていたこと事態忘れてるよ」
「・・・それじゃ思い出せないじゃない」
「思い出すのは後でいいんだよ頭の中で話が終わったら。それまでは頭に保存していればいいんだ」
事実、俺はいつも朝の通勤電車の中か休みのひたまに家族と車に乗る時しにか考えない。それ以外は頭の片隅にもなく完全に忘れている。
「ふーん・・・変な頭」
彼女は俺の髪をくしゃくしゃになで満足そうにニンマリと笑う、手を振り払うと今度は背中を蹴ってき
た。俺は日々彼女のこうした嫌がらせに悩まされている。この間なんてアザができたほどだ。
俺の体は絶えず彼女の付けた傷でいっぱい。何でも証だとか・・・・・。(意味不明
そもそも彼女が俺の家に押しかけてくるようになったのはごく最近のことで、別に幼馴染とか親同士が
仲がいいとかじゃない。無論付き合ってもいない(絶対ヤダ
一ヶ月前、悪友とバカやって教員に叱られた時のことだ。
友人は「ゼッテー見なきゃいけないテレビがる!!」とかいって猛スピードで帰宅。
カバンを職員室まで持ってきてなかった俺は小走りで、独り教室に。ドアを開けるとクラスではおとなしいに人に部類される彼女がいた、ってか俺のカバンをあさってた・・・。
どおやらこの時間まで生徒会が長引いたようだ。
驚いてカバンを取り上げると彼女の手に俺の国語のノートが、血の気が引く思いでノートを取り返そう
とした、が軽々と避けられたうえ逆に蹴られた!
彼女の右足が俺のミゾ落ちにクリーンヒット!!。
そのまま床に膝を付いてお腹を抑える。音もない一瞬の俺らの行動は、はたから見たらアクション映画のワンシーンのよおだろう。
そして彼女はおもむろにノートを開いてニヤリと笑った。顔がに真っ青になる。『見られた・・・』
「この続き読ませなさい。じゃないとみんなにバラすわよ」
物凄く楽しそうな顔で俺を見る。通常の彼女からは想像できない姿だ。
『こいつサドだ!!!』この時俺は確信した、こいつは究極のドSだと。
俺の国語のノートには、ところどころ小説が書いてある。パット見、作文や感想文に見えるだろうから提出するまでは
めんどくさいので消さなかったのだ。それに国語の授業は物凄くつまらない、別に教師がダメとかでわなくただ単純に嫌
いなのだ。理由なんてない、と言うか『理由』が一番嫌いだ。この本の感想文とか、ここが好きな理由とか、感覚と勘で生きている俺には必要ない。
おかげで中学の時、国語は三年間ずっと2だった。
まぁそんなわけで彼女は週一のペースで突然僕の家に現れては帰って行くようになった(正直迷惑
しかし、親、兄弟にさえ言っていない俺の秘密、言わば弱みを彼女は握っている。チキンの俺は渋々耐えてるのだ。
「お茶!」
「はいはい」
そして彼女は女王様きどりに俺を使う。いい気なもんだ。
「兄貴この頃優しくなったよな〜」
夜、彼女と帰り入れ違いで帰ってきた一つ下の弟が、ソファでテレビを見る俺に言った。
「・・・何急に」
弟も彼女もいつだって俺の不意をついたことを言ってくる。
「なんか、野生のトラが動物園に入っておとなしくなったみたいな」
「なんだ、その回りくどい言い方は」
野生のトラってどれくらい俺は凶暴なんだ。確かに喧嘩とか、ガラス割ったりだとか、教師イビリとかしなくなったけど。
「それは恋よ!」
玄関から馬鹿でかい男の声。
「お母さんは見たんだからお兄ちゃんが女の子と歩いてるところ!!」
リビングのドアを勢いよく開け、出てきたのは俺の親父。なぜこんな言葉使いかと言うと簡単にオカマだからである。
もちろん母親が幼い時に死んだとかではなく、ちゃんと生きている。しかも親父をオカマと知ってての結婚(親公認
なぜ許した爺ちゃん婆ちゃん・・・。共働きなので母さんはまだ帰ってない、「そんな時はパパがママ代わりよ」と言って、昔から母さんのいない時はこんな感じでいる。
「・・・・女の子?」
理解不能。いつこの真面目な僕が女の子と歩きました?確か最後は中学の修学旅行で同じ班だった山本さんと柊さんだったような・・・?
「ちがう!今日の夕方よ!!」
「今日の夕方・・・?」
てか、親父仕事はどうした・・・。
「とぼけたって無駄無駄!ネタは上がってんだよ!!二人でコンビニにいるのを目撃したんだからよ!!!」
親父のキャラが壊れていく。
「そっれて藤堂先輩!?」
弟も興奮して首を出す。うん?藤堂・・・?
「藤堂って言うのか?それよかあいあい傘のほうが気になったな」
もはや男に戻っている。
「あーあー藤堂ね藤堂!」
「「ヤッパリ!?」」
綺麗にハモッタな。
「別にそんなんじゃないよ、ただの友達」(てか、女王様と下僕みたいな・・・?
「本当だったんだ兄貴と藤堂先輩が付き合ってるって噂」
「は?何だそれ!?」
付き合ってる!?僕とあのドS女が!!?ヤッヤダ〜〜!!!
「まぁよくやったわねお兄ちゃん。今度遊びに来てもらいなさい」
何、のんきなことを!
「家にならもう、来てじゃん」
当たり前のように弟は言った。え、?確かに来てるけどお前いなかっただろう?俺は彼女と家族を会わせないようにと
いつも誰もいない時間に来るように言っている。ただ、わがままなため何日に来るかは謎。
僕の顔を見て察したのか弟は説明しだした。
「一週間前・・・・・
その日、財布を忘れて友達の家から戻って来たんだ。
〈ただいまー〉
リビングにある財布を取って再びクツを履こうとした時ドアが開いた、けど当たり前のように開けるから家族の誰かなんだと思って気にしなっかた、でも次に顔を上げたら・・・。
〈〈・・・・・・・〉〉
藤堂先輩なんで家に!?しかも普通にドア開けちゃったよ!!両方ともフリーズ。
〈こんにちは。お邪魔します。〉
〈どッどうも・・・いらしゃい・・・。〉
さすがわ評判のいい藤堂先輩、丁寧に挨拶して家に上がる。ってダメでしょ!
〈あっちょ・・・!〉
〈誰〜?〉
二階からする兄貴の声でかき消された。
〈私〉
え?
〈あーー・・・・〉
兄貴の知り合い!?絶対付き合う友達、間違ってるよ藤堂先輩!!
・・・・・それとも付き合ってるのかな・・・・・?
面白いから言いふらそっ♪
と言うわけ」
「「・・・・・・」」
「お前が――――・・・・・・!」
「本当に!!?」
叫ぼうとした瞬間、親父に飛ばされ背中を打つ・・・痛い・・・。
「やったわ!ついに孫が生まれるのね!!?」
話とびすぎだよ・・・。叫びたくても痛くて声が出ない。
てか、教えろよ弟よ・・・。
「ゴメン、先輩に聞いたかと思って」
言うわけねーじゃんあの女が・・・・・・・・絶対遊ばれたな俺・・・・・。
「あらっ喧嘩中?」
さっきから勝手に人の心読むな!
「だってお兄ちゃん顔に出やすいし〜」
キモい声出すな!ドンドンと床を叩いて声にならない気持を抗議した。
「本当にあの子変わったわね・・・。」
「うん、昔だったらとっくに切れて大暴れ」
「撃たれ強くなったもんだわ」
「まったく・・・。」
「いい、よく見とくのよあれが自分色に染まっていくってこと!!」
「・・・・・・・・・」
そんな俺をほったらかして親父は弟に変なことを吹き込んでいた。