表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/3

スイーツは友情の味!?ござるランドから来た使い魔・ぽこべぇ!

放課後の教室。夕焼けの光が斜めに差し込み、机の上に長い影を落としていた。


 窓際の席に座るいろはは、こっそりため息をついた。


「次なる使命は、いったいどこにあるでござるか……」


 誰にも聞こえぬよう、心の中でつぶやいたそのとき――。


 

 机の引き出しが、ほんの少しだけ勝手に開いた。


 中から、ひょこりと現れたのは、小さくてふっくらした和風のたぬき。


「……ぽこべぇ!?」


 思わず声が出そうになったいろはは、口元を両手で押さえる。


「しーっ! 声がでかいでござるよ、いろは殿!」


「そ、そなた……なぜここに!? まさか、ござるランドから……!?」


「うむ。久しぶりでござるなぁ。いろは殿をお助けするため、拙者、再びいろは殿の使い魔としてまかり越した次第にござる!」


「……本当に来てくれたでござるか、ぽこべぇ……!」


 懐かしさと心強さが一気にこみ上げ、いろはは思わず頬をゆるめた。




 ――ぽこべぇ。いろはが“ござるランド”で修行していたときの、大切な仲間。共に忍術を学び、何度もふざけ合い、時に真剣な任務にも挑んだ、よき相棒である。


「変わっておらぬでござるな、その丸っこさ……」


「ふっふっふ、拙者の変化の術、今や三段進化するまでに極めたでござるよ!」


 その瞬間、ぽこべぇの体がぼんやり光を放つと、小さな文鎮の姿に変わった。


「……まさか、それが変化の術の最新版でござるか」


「うむ。これで誰か来ても、完全に机の一部でござる!」



 しかし、そこへ――


「いろはー、まだ教室にいたんだ? あ、机の上にかわいい文鎮あるね!」


「ばっ、ばかっ、見られるでござるっ!」


 ぽこべぇは小さく震えながら、文鎮のふりを続けた。


「そ、それは……あの、骨董市で買ったレアものでござるよ!」


「あー、さすがいろは、趣味が渋い〜。じゃ、また明日ね〜」


 ドアが閉まり、足音が遠ざかると――ぽこべぇはぶるるっ、と震えて元の姿に戻った。


「ふぅ〜〜、ぎりぎりでござったな」


「危なかったでござるな……しかし、相変わらず見事な変化術でござる」


「ふふん♪ 人に見られず支えるのが、拙者の流儀でござるからな!」





放課後、いろはの部屋。

こたつの上で、ぽこべぇはおせんべいを抱えながらも真剣な顔をしていた。


「さて、改めて申し上げるでござる。拙者、ぽこべぇは、いろは殿の使い魔としての任を再開しに参ったでござる」


「うむ、拙者も歓迎するでござる。これより、また共に戦う仲となるでござるな」


 二人はぴしっと正座をし、小さな手と人間の手をしっかり合わせた。


「再びの契約、成立でござる!」


「契約、完了でござる!」


 その瞬間、机のランプがふっと灯り、わずかに光が二人を包んだ。


「しかし……そなたがくるほどの事態とは、この人間界で一体何が起きようとしているのでござるか?」


「どうやら、“闇に心を染められし者”が、人間界に増え始めているらしいでござる。とくに、若き乙女たちの心は狙われやすいのだとか……」


「なんと……それは、拙者の通う学園が標的となっても不思議ではないでござるな」


「そういうことでござる。そなたの力が必要でござるよ、いろは殿」


 ぽこべぇは真剣なまなざしで、いろはを見上げた。


 いろははぐっとこぶしを握りしめる。


「わかったでござる! どんな闇が来ようとも、そなたと共に、拙者、立ち向かうでござるよ!」


「それでこそ、いろは殿! では明日からは、筆箱の陰に潜伏しつつ、授業にも同行するでござるよ」


「……まこと、頼もしき使い魔でござるな」


 二人はほほえみ合いながら、ふたたび始まった“共闘の日々”に胸を躍らせるのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ