転校してきた魔法少女!?正体は秘密でござる!
――風がそよぐ春の朝。私立ふたば学園では、新学期早々ちょっとした噂でざわついていた。
「ねえ聞いた? 今日転校生が来るんだって」
「しかも海外のお姫様らしいよ」
「いや、忍者って噂も……どこの時代だよ」
教室内にはざわめきが広がり、新しい出会いにワクワクする生徒たち、冷めた視線でそれを聞き流す者、すでにネタとして盛り上がっている者など反応はさまざま。
窓際の席でため息をつくのは、2年B組のクラス委員・桜井さくら。
(どうせ、普通の転校生でしょ……)
そのときだった。
「拙者、風間いろは! 魔法の国『ござるランド』より、この地の平和を守るために参上仕った!」
ガラッ!!!
教室のドアが豪快に開き、まばゆい光をまとった少女が仁王立ち。
袴姿に草鞋、背には杖のような謎の棒、髪には星型の飾り。そして――自己紹介がまさかの「拙者」始まり。
「……マジで忍者じゃん」
「いや、魔法の国って言ってたぞ今」
「草鞋って、校則的にどうなん……?」
クラスは騒然。担任の先生は苦笑いを浮かべつつ、
「えーと、風間さんは……ちょっと特殊な家庭環境で……その……」
と、何とも苦しいフォロー。
「よ、よろしくお願いするでござるっ♡」
満面の笑みを浮かべて一礼するいろはに、さくらは思わず椅子から転げ落ちそうになった。
「それでは、風間さんは後ろの空いてる席に――」
「拙者、前の席がよいでござる! 敵は常に前方から来るゆえ!」
「……いや、席は決まってるから」
先生の苦笑いにもめげず、いろははサッサと教室を歩き、決められた席――さくらの斜め後ろに腰を下ろす。
「おぬし、さくら殿と申すか? 拙者、気配でわかるのでござる」
「えっ、なんで私の名前……名札も見てないのに」
「……気の流れが違うのでな」
「うさんくさっ」
いろはは、筆箱からシャボン玉のような光るビー玉を取り出すと、机にコロンと置いた。
「この教室、結界が薄い。アクダイカンの手下が入り込むやもしれぬ」
「誰それ……ていうか、その玉、光ってるけど大丈夫?」
「大丈夫でござるよ、たぶん。爆発は……今日はしない予定!」
「予定なの!?」
さくらはこめかみに手を当てながらも、なぜか少し笑ってしまった。
(なんだろう、この子……めちゃくちゃだけど、なんか放っておけない)
ちょうどそのとき、チャイムが鳴り響いた。
始業の合図と共に、静かに幕を開ける――魔法とツッコミに満ちた、波乱の新学期。