東へ
多くの人々に見送られて6人は城門を出た。
何も無い。
ただ荒野が広がっている。
あれだけいた魔王軍が一人も見当たらない。
もちろん全滅した訳ではないだろうが、
ここまで見当たらないと逆に不安になってくる。
「一匹もいねぇな」
先頭をタンクのグレゴリーが歩いている。
右翼のザノバックが頷く。
左翼のパトリックはキョロキョロと挙動不審だ。
「何か道めいたものもないのは、
少し不安になりますね」
と、ルクセラの顔が曇る。
「ご不安でしたら、私の胸にお越しいただいても」
マーティが右手でルクセラを誘う。
ルクセラの右に俺が、左にマーティが歩いている。
「見るな、話しかけるな!娘が穢れる」
流石に父親同伴のパーティーでは、よからぬことは
起こらないだろうが、このマーティ。
気を付けねば。
ノヴァは、気を引き締めた。
歩くこと6時間、途中襲われることもなく第一の予定地
グラン砦に着いた。
まず、生存者を探せとのことだったがまったく気配がない
明らかに人がいない。
無惨なほどあちこちに血のあとが付いている。
ルクセラが神への祈りを捧げる。
気持ち空気が爽やかになったようだ。
「誰もいない」
辺りを探索したパトリックが戻ってきた。
相変わらず声が小さい。
「魔王軍の形跡はないのか」
グレゴリーの問いにパトリックは頷く。
「とりあえず今日はここで野営だな」
一応屋根はあるけど、廃墟なら野営って事になるか
「で、見張りは誰から」
グレゴリーの問いかけに
「それなら俺と娘で最初に立たせて貰おう」
「それはお父さん、私とルクセラさんで」
顔を近づけ変な顔で見つめ合う二人。
「じゃんけん」
小さな声でパトリックが提案する。
「よかろう」
なぜかグレゴリーが答える。
「では、勝者がルクセラ殿と一緒に見張りに立つ。
と言うことで」
「なぜお前がやる気満々なのだ」
「コレは王子、いなことを。
勝った者が、と言いましたが」
「ふん」
しょうがなしにじゃんけんを始めようと
するマーティが他の二人も参加する気なのをみて
ため息をついた。
結局5人でじゃんけんすることに、
最初はグー……。
「ヨッシャー!
正義は勝つんだよ。かみさまは、見ていた」
ノヴァは、両手を天に突き上げた。
「親父殿ではしょうがないか」
早めの食事の後、3時間交代で見張りにつく事になった。
「ルクセラ。気をつけよ」
「はい。どこから魔王軍が」
「そうではない。
あ奴ら四人に気を許してはいけない」
「皆さま、良い方々ですよ」
「お前は、母さんに似て人を信じ過ぎる。
世の中には、
下心満載の輩もいる事を知っておくべきだ」
「お父さまは、心配しすぎですよ」
片付けが終わると各々(おのおの)が武器の点検に入る。
「お前ら、早く寝ろ」
仕方なく横になるが、皆ルクセラの横顔をじっと眺めている。
そうこうするうちに、3時間がたちザノバックとパトリックの2人が見張りに立つ。
この2人、基本何も喋らないので
夜間静かに時が過ぎる。
そしてグレゴリーとマーティの番。
この2人は……、うるさい。
ずっとしゃべっているので、目が覚めてしまう。
「ええい。うるさいわ!
お前ら静かに番ができんのか」
「静かにしとったら寝てしまうわ」
「そうじゃ。静かにしたら寂しいではないか」
「何を言っているんだ」
そんな3人を手で制してパトリックが聞き耳を立てる。
「どうしました」
ルクセラの問いかけに
「囲まれています」
「数は?」
「たぶんそんなに多くない。10体はいないと思う」
「ルクセラは俺の後に」
「グレゴリー。死んでも守れよ」
マーティが言い終わると同時に
四方へ先制攻撃を掛ける。
話あった訳でも無ければ、
そんなルールもない。
ただ、後手になるのは良策でないと全員が動き出した。
方はすぐについた。かに見えた。
グレゴリーが、ルクセラのそばを離れ
誰もが一息ついたその時。
遠くから大岩が降ってきた。それぞれが対応する中
ルクセラの側に、どうにかザノバックが間に合った。