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反撃

 マーティの一撃で魔王軍を一掃した後、

城内では宴が開かれていた。


「まったく。

あんな凄い技持っているなら最初に出せってーの」

ノヴァが、くだをまく。


「まぁまぁ、アナタ。

余りマーティ様を悪く言うのはおよしになったほうが、

彼のお陰で勝った様なものですし……ね」

旦那のあつかいに慣れているのか、

サッとうけながすエリザベス。


「イヤ、奥方。

ご主人の言う事は、一理ある」

グレゴリーが話にはいってくる。


「ルクセラ殿のお陰で、我等には傷一つ残らなんだが。

それでもあのジリ貧状態まで何もしないとはいかがなものか」


「そうだよ。

アレ、結構ピンチだった」

そう言うパトリックの横でザノバックがだまって頷く。


全員の服が返り血で汚れているので、

国王から騎士風の服が支給されている。

グレゴリーは合う服がないのか、

上半身タンクトップに

騎士のマント。

ザノバックはどうにか着てはいるが、

パッツンパッツンだ。


それに引き換え、孫にも衣装のパトリック。

近衛兵と言っても過言ではないほど似合っている。


皆、初めてパトリックの顔をまともに見た。

まだ幼さの残る少年のようだ。


落ち着いているせいか、目は血走っていない。



「あららららら、パトリックさんって可愛いのね」

エリザベスが近づいて両手でパトリックの頬を撫でる。


「やめて下さい」

真っ赤になって俯くその姿は、確かに可愛い

とはいえルクセラには近づかせんがな。


「そういえばママ。

ルクセラは何処にいるんだい」


「ん〜。ルクセラちゃんならマーティ様と二人で」

驚愕のノヴァ。


「ママは、それでいいの、

「なぜママはそれを知っていて落ち着いていられるの、

ルクセラのピンチじゃないの」


「大袈裟ねぇ。

人類の危機的状況で手を出すほどマーティ様は

愚かではないと思うけど」


「いんにゃ!愚か者に見える……

ああ、すんごい見えてきた」


「ヒールかけてるだけよ」


「それにしても遅い。

もしものことが……、まさかあのマーティの野郎」


「どうどう、マーティ様は王族なのよ」


ここではマズイか。

後で始末してやる。

「で、何処にいる?」


「さぁ?」


「そりゃ、マーティの部屋じゃないかなあ」

パトリックが、料理を物色しながら答える。


「パトリック!お前場所が分かるのか?」


「知らないよ……、けどそのへんのメイドさんに聞いたら分かるんじゃない」


そう聞くやノヴァは、宴を抜け出していった。


「まったく。親バカもたいがいだな」

ノヴァが出ていった後、イアンが現れた。


「おお、イアン。体は大丈夫なのか」

グレゴリーがイアンの肩を叩く。


「ありがとうグレゴリー。歩く分には問題ないよ」

そう言うとイアンは、自然にエリザベスの側に立った。




メイドさんからマーティの部屋の場所を聞き、

ノヴァはノックもせずに戸を開けた。


バタン!

開いた先には、裸の男女が……。


「許さん!」

見た瞬間詠唱を始めるノヴァ。

「我が魂よ、煉獄の業火をまといてかの者を焼き尽くせ!」フゴッ!

詠唱の途中でルクセラのゲンコツがノヴァの頭を打ち下ろす。


「止めて!」

「何考えてるの、マーティがやっと治ったのに」

ふくれっ面のルクセラ。

怒っているのにカワイイ。


歯切れ悪くモゴモゴと、ノヴァは言い訳をならべた。

「だってコイツ。

あんな凄い技持ってるくせに、

ギリギリまで出さねぇんだぜ。酷くない」

「それにルクセラにヒールかけてもらって、

ただの魔力切れでしょうが」


ドスッ!

ノヴァの鳩尾にルクセラの拳がめり込む。


悶絶のノヴァを見下ろす様にルクセラが言った。

「い〜い。

マーティは最初、聖剣を手にした初討伐でいきなりエクスカリバーを放ったの。

もちろん敵は跡形もなく消し飛んだわ。

ケドね、それから一月。

まともに立ち上がれないほど具合いが悪くなり、

もう二度と聖剣は持たないって、引きこもってしまったの」


そうか、なんの代価もなく

あんな凄い技は出せないのか。


ベッドでスーツにくるまったマーティが、

ノヴァを見ている。


「イヤでイヤで、怖くって。

それでももう後がない人類のために、

今一度勇気をふるって聖剣を手に取った。

それでも、あの技を使うことをマーティの心は拒否した」


事情も知らず、ただバカにしていた。

ノヴァは、鳩尾に手をやりながら項垂れた。

「すまなかった」


ノヴァが素直に謝ると、ルクセラが抱きついてきた。

「人はだれもが過ちを起こす。

しかしそれを認め、

正す行いが出来る人はとても素晴らしい」

「私は、お父さんの()で良かったわ」


ノヴァも優しくルクセラを抱きしめる。

ルクセラの肩越しにいやらしい目をした塵屑(マーティ)の顔が見えた。


「ルクセラ。早く服を着なさい」

はっ。っとしてルクセラは、羽衣を巻く。


「お父さん」

マーティがベッドから起き上がる。

ハラリとシーツが床に落ちる。


「誰がお父さんだ!服を着ろ」


「この戦いが終わったら、娘さんを…」

「やらん。服を着ろ」


彼女(ルクセラ)のためなら、何でもします」

「何でもって……、なら

あの技、何度もバンバン使っちゃってくれるのかなぁ」

意地悪く顎を上げて、マーティを見下ろすノヴァ。


「それは……。

彼女(ルクセラ)の為なら、死ねる!」


「誰の真似だよ。

まぁしかし、その心意気だけは認めてやるよ」


渋々マーティを認めるノヴァ。

その姿をルクセラは微笑んで見ている。



三人で宴へ戻るとすぐさまグレゴリーが上座へと導く。


「あいさつしろってよ。

俺じゃ言葉悪いし、パトリックは照れて隠れやがる。

ザノバックはまぁ……な」

「頼んだぜ」


一段上がった壇上には、

イライラした宰相が待っていた。

「え〜、魔王軍討伐の立役者であり。

人類の希望。

マーティ王子!こちらへ」


「仕方ないなぁ、みんな」

マーティが右手を挙げると、場内から拍手が沸き起こる。

流石はこの様な場に慣れてらっしゃる……と思いきや、

まさか本当に声援を受けるとは思っていなかったらしく


「ああ〜、いや、その〜」

と、照れ出した。


「マーティ様。しっかり!」

ルクセラの声援を受けて、マーティは仕切り直す。


「まぁ、僕がいれば魔王軍なんてどうってことないさ」

場内からは大きな拍手が起こる。

本当にマーティは、最後の希望なのだ。

そんな拍手を両手で静まるように制止。


「と言いたいところだが、正直僕だけでは

どうしようもなかった」

振り返るとパーティーメンバーを見渡し

「だが、みんなとなら勝てる」

その笑顔がルクセラだけに向けられた。

が当のルクセラは、皆に手を振っていて気づかない。

フッっとノヴァは鼻で笑ってここはスルーした。


すると宰相が

「では、王様からお言葉を」

上座にいる王様にバトンを渡す。

なかなかに進行が早い。


王様が立ち上がり。

皆がひれ伏す。

と……


「出撃」


その一言で、また椅子に座った。


「えっ?父上。

今、戦って帰って来たばかりなのですが」


その言葉に、宰相が答える。

「現在、魔王軍の侵攻は止まっています。

このようなことは、かってなこった事です。

今しかないのです。

今こそ、反撃の時なのです」


ものすごい拍手、招待客だけではなく

兵やメイドまで手を叩いている。


「フン!行くしかないか」

グレゴリーが、あきれたようにマーティの肩を叩く。


もう少し休んでいたかったが、仕方ないか。

ノヴァの横で、バチン!っと

ルクセラが自分の頬を叩く。

「行きましょう」


その言葉にパトリックとザノバックが頷く。

マーティもしぶしぶという感じで口を(つぐ)んだ。

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