裏取引
ノヴァは早速家に帰り、ことと次第を妻のエリザベスに話した。
「まァ、そんな話が。
それでアナタは、あとをつけていこうと思っているのね」
ノヴァとエリザベスは、元白魔導師である。
同期の二人は教えに反し18歳でつながってしまった。
故に、白魔導の力を失い20歳を前にして結婚、二人は
黒魔導士へとジョブチェンジした。
ノヴァはエリザベスを気遣いながら、
エリザベスは幼いルクセラにおっぱいをやりながら、
頑張って学業に勤しみ
二人は黒魔導士として生計を立てられるようになった。
そして16年、当時エリザベスをエロい目で見ていた先輩のイアン・パーマーが同行者になるなんてノヴァとしては、気が気ではないのである。
「ママ、どうしよう」
「とりあえず、先輩にあいさつに行きましょう。
無理だとは思うけど、なんとかアナタと変わってもらえたらいいのだけれど……」
「そうか、俺がパーティーメンバーになれば
コソコソつけて行かなくてもいいんだ。
ママ!頭いいー」
早速エリザベスは、アポイントをとりその日の夜8時教会裏の森で会うこととなった。
「ああ〜なんだよ、エリザベスから久しぶりに
連絡があったと思ったのに、なんでお前しかいないんだよ」
何処の帰りかは分からないが、礼服にステッキを持ったイアンがイライラしながら突っ立っている。
教会からのほのかな明るさしかない裏地に、
二人は向かい合っていた。
「お久しぶりです。実はうちの娘がこの度選抜メンバーに選ばれまして、できれば黒魔導士の枠を譲っていただけないかと……」
「はぁ?なんで、そんな事するわけないでしょう。
僕になんのメリットがあるの?バカしゃないの」
「まぁそうですよねぇ。もちろんただと言うわけではありません」
ノヴァは、懐から大きな袋を取り出した。
「ここに100万Gあります。コレでなんとかなりませんか」
「僕をなめてるわけ?
エリザベスがお願いするならまだしも、なんでお前のお願い聞かなきゃならんの。帰るわ」
「待って……」
ノヴァが言い終わる前に、イアンは振り向いて呪文を唱える。
「パラライズ」
ノヴァの動きが止まった。
「せっかくだから、そのお金だけはもらって行くよ」
しかし、イアンの身体も動かない。
「なぜ。何が起こった」
「種は、簡単よ」
木陰からエリザベスが現れる。
「反魔の鏡か」
「そう」エリザベスがノヴァの前まで行くと、
シャツを引き上げて反魔の鏡を取り出す。
「にしても流石ね、口だけでも動かせるなんて」
「ふん!得意技だ。ある程度の耐性くらいある」
「ても、お金だけ取ろうとするのは酷くないですか。 それとも代わっていただけますの?」
「そうそう簡単に代われない。
なにしろ僕を推してくれた第4師団の面子にかかわる」
イアンは渋い顔で答える。
「第4師団と言えば、ローレンスですか。
後で、お話に伺います」
「それでも、ダメだ。」
本当に困っできるようにイアンは、
エリザベスのお願いをはねのける。
一つため息をつくと、
エリザベスはイアンの耳もとでボソボソと話出す。
イアンは目を見開いて「本気か」
と、だけ答える。
動けないまでも目だけ動かしていたノヴァは
流石ママ、と思っていた。
どうせ得意のパラライズで動きを止めてくるだろうから
反魔の鏡で相手共々動けなくしてから、ママが現れる。
後は、動けないイアン相手に脅せばいい。
断れば体ごと森の奥まで連れていき縛っておけば、
明日のパーティー結成式に間に合わない。
ああ、俺の横を通ってママがイアンを引きずり森の奥へ消えてゆく。
ママに引きずられるイアンは……、笑ってやがる。
変態が!
どこまでいったのか、ママがなかなか帰ってこない。
「ママ〜」
どうにか声は出るようになったが、動くにはまだ
時間がかかりそうだ。
「ママ〜」
しばらくたって、ママはイアンを連れて戻ってきた。
縛ってなかったのか?
「アナタ、代わってくれるそうよ」
ママの後ろで、妙に顔を引きずらせたイアンが頷いている
「あんなところで縛られっぱなしはきついからな」
そういうと、イアンはとっとと帰っていった。
キツネにつままれたような事態に
「よかったじゃない。
兎に角これこらよ。
急いで二人分の旅の用意をしなくっちゃ」
ママに急かされ、俺はやっとノロノロと動く体で歩き出した。