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選抜パーティメンバー

 夜通し戦っていた騎士団のエース、ヨハン・オルフレイトはヘトヘトで兵舎へと戻ってきた。

戦いも3日目に入り、無傷の兵は一人もいない。

なのに魔王軍へは、ぞくぞくと新しい魔物がわいてくる。

「気持ちで負けてはいけない」

そう自分に言い聞かせても、足取りは変わらず重い。



「いや~、ルクセラちゃん。かっわいいなぁ」

「ほんとマジ天女だわ」

‘「それにしても誰だよ。肝心なところが見えなかったじゃないか」

「それな。俺なんて一瞬死んでたのに、目開けちまったもの」

がはははは

「それ、死んでねぇって」

あははっ

「お前. まえより、元気になってるだろう」

「そりゃルクセラちゃんに癒やしてもらえたからな、もうち~っと戦えるっつーの」



なんだこれは、次々と兵舎から元気な兵士達が出てくる。

白魔導士のルクセラ・エルリック

名前だけは知っているが、それほどのものなのか。

兵士の波に逆行して兵舎に入ったヨハンは、大男に抱きつかれた可憐な少女が目に入った。


「君、いくらなんでもやり過ぎじゃないのかな」

ヨハンは男の肩を掴んだ。

が、男は煩わしそうにその手を拭うと


「ああーん。誰に言ってんだテメェ」

ふたりの男がガンを飛ばし合う。


‘「お父様。言葉遣いが乱暴ですよ」


「ごめんよルゥ、気をつけるよ」


言葉はやさしくなったが、その目はヨハンを値踏みするようにつま先から

頭の天辺まで睨み付ける。


「お父様でしたか、これは失礼致しました。

私は、ヨハン・オルフレイト。騎士団第一師団の師団長を背任している者です」


美丈夫のヨハンが、正式な騎士の礼をもって挨拶する。

「そうですか、私はルクセラの父です。用が無ければ何処かへ消えていただけるかな、

今、大仕事を終えた娘を歓待しております」


「いえ、私も少し疲れていまして出来れば少々癒やしのお力を賜れればと……」


「これはこれは、騎士様ともあろうお方が少し疲れたくらいでここへいらっしゃるとは。

なんともはや軟弱になったものですなぁ騎士団も」


「私の事はなんと言われてもいいが、騎士団全体はけっして軟弱ではありません」


ムッとしているヨハンをみかねて、バーバラが近づいてくる。

「なんのケンカなのです?

私がヒールをかけるので、ケンカやめるのです。まだ多少は浄化の力が残っているのです」


「おお、それがいい。師団長様はあ・ち・らで癒やされていればいい」


部屋の奥を指さし、ノヴァの声色が急に佳くなる。

「いえ、あのルクセラ様に少しお話がありまして」


ノヴァの声色が急に悪くなる

「あん。あんだって~!」


「お父様!」


ルクセラがノヴァの手を抓る。


「あいててて、エリザベスと同じことをする」


「当然です。お母様仕込みですもの」


そう言うとルクセラはノヴァを下がらせた。


「師団長様、私にお話がありますの?」


ヨハンはノヴァの殺気を警戒しながら、話し始める。

「あっと、そうですそうです」


「今、我々人類は魔王軍に押し込まれています。

この城塞都市マルカルーシアが堕とされれば、王都までは一直線。

何も遮る物がありません。

故に事態を好転させる為に、残った人類の中から選りすぐりの精鋭パーティをつくるべく

各師団長がコレはと思う人材を探しています」


「はぁ」


「そこで、第一師団からはルクセラ様を推したいのですが……よろしいでしょうか」


「ふん!見る目だけはあるようだが。断る!」


「お父様は、引っ込んでいてください」

しょぼくれた大男がルクセラの後ろへと下がる。


「話は分かりましたが、私などではなく白魔導師第一位のアーバンティア様や第二位のビアンカ様など

私より優れた方々が」


遮るように首を食って、ため息混じりにヨハンが言う。

「お二人とも王様と王子様直属の白魔導師として城から出ることを禁じられております。

しかもお二人とも最近は白魔法を使ったところを、見た者がいない有様で……」


「おいおい、それってダメなやつじゃねえか」


また自分より前に出た父親を止めるのも忘れ、ルクセラは両手を口に当てる。

「なら、ルクセラお姉様しか居ないの」


「私もあなたを推すわ。シスタールクセラ」

アマンダとバーバラが顔を輝かせてルクセラを推す。

二人と顔を見合わせ、

その思いにルクセラは意を決した。


「分かりました。微力ではありますが、よろしくお願いいたします」


「ふふふ、仕方ないなぁ」

顎に手を当てノヴァがつぶやく。


「ありがとうございます。お父様」

父親の許しも得た。


「では」


詳しい打ち合わせをしているヨハンとルクセラ、その横でしっかりと内容を頭に叩き込むノヴァ。

まさか、父親がついて行こうとしていることなど知るよしもない二人である。


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